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『ルージュの手紙』

 
       

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作品データ
原題 The Midwife 
制作年・国 2017年 フランス 
上映時間 1時間57分
監督 マルタン・プロヴォ(『ヴィオレット-ある作家の肖像-』『セラフィーヌの庭』)
出演 カトリーヌ・ドヌーヴ(『シェルブールの雨傘』『8人の女たち』『しあわせの雨傘』)、カトリーヌ・フロ『地上5センチの恋心』『偉大なるマルグリッド』『大統領の料理人』)、オリヴィエ・グルメ(『少年と自転車』)
公開日、上映劇場 2017年12月23日(土)~シネ・リーブル梅田にて公開! 12月30(土)~シネ・リーブル神戸、順次~京都シネマ 他全国順次公開

 

フランスの二大女優が夢の競演!
面倒くさい女と放っておけない女、切れそうで切れない女の絆

 

フランスを代表する二人のカトリーヌが、面倒くさい女とそれを放っておけない女を演じる。面倒くさい女というのは確かにいる。平気で人に甘えてくる。ズカズカ人の領域に踏み込んでくる。かと思えば殊勝な態度を見せる。だから、情にほだされる。そんなところだろうか。聞くだけで面倒くさい!と思うかもしれないけど、案外多い組み合わせかも?


rouge-500-1.jpgベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)は恋多き女。70歳を越えてなお色香が漂う。一緒にいると気持ちが弾む。いくつになっても可愛い、と思わせるのはこんな女だろう。一方のクレール(カトリーヌ・フロ)は女手ひとつで息子を医大に通わせる49歳の助産師。ベアトリスはクレールの今は亡き父、アントワーヌのかつての恋人だった。父を捨て出奔してから無しのつぶてだったのが、突然連絡を寄こし父に会いたいと言う。亡くなったことすら知らぬまま30年が経っていた。当然、すすんで会いたくはない相手だ。そんな二人が、諍いながらもほんのひととき寄り添い合う物語。


rouge-500-2.jpgカトリーヌ・ドヌーヴが美しい!女でも惚れ惚れする。ギャンブルで日銭を稼いだり、タバコをふかしたり、うらぶれた佇まいがとびきりカッコいいのだ。質屋で店主相手に食い下がる姿ですら惨めさを感じさせない。いや、惨めと言えば惨めなのだが、決して下品にならず、ただ上品なだけでもない、その境目の絶妙なラインと言おうか。一方、クレールもベアトリスと再会してからどんどんあか抜けてゆく。お酒を覚え、香水を使うようになる。ベアトリスはクレールの人生に最後の贈り物をしに現れたのではないだろうか。女って面白い!と思わせてくれる。


rouge-500-5.jpg監督は劇団「コメディ・フランセーズ」で俳優経験を持つマルタン・プロヴォ。男の監督が女の感情のひだをここまで細やかに描き切るなんて、と舌を巻く。監督自身が助産師に救われた経験を持ち、この職業に特別な思い入れがあったというだけに本編では出産シーンが何度も登場する。驚いたことにカトリーヌ・フロが実際に新生児を取り上げている。出産というプライベートかつデリケートな場に、部外者が介入するというのは並大抵のことではないはずだが、その甲斐あって、クレールの日常のひとコマとして何ものにも代えがたいリアリティを与えている。


rouge-500-4.jpgこちらのカトリーヌもやはり美しい。心労も苦悩もちょっと眉をひそめただけで、すべてを引き受けながら飲み下してゆく。面倒くさい女と放っておけない女は、引き受けない女と引き受ける女とも言えるのかもしれない。しかし、人間、どこまでも困難から逃げ続けることはできない。かくして、ベアトリスは彼女なりの決着をつける。そのとき残すのが“ルージュの手紙”。とびきり切なく余韻の残るカットだ。


rouge-500-3.jpgもうひとつ最高なのは、アントワーヌのスライドを二人で観るシーン。そこに登場するクレールの息子シモン(カンタン・ドルメール)。扉を開けると部屋の壁に映した祖父の面影にシモンの横顔が重なり、息をのむベアトリス。頬は涙でぬれている。そして、父の思い出を封印してきたクレールの目にも涙が滲む。様々な思いが去来する味わい深いシーンだ。二人の女の生き様と丁々発止のやり取りを、ぜひスクリーンで堪能してほしい。


(山口 順子)

公式サイト⇒ http://rouge-letter.com

© photo Michael Crotto