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『嘘八百』

 
       

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作品データ
制作年・国 2017年 日本
上映時間 1時間45分
監督 【監督】武正晴 【脚本】足立紳 今井雅子
出演 中井貴一、佐々木蔵之介、友近、森川葵、近藤正臣
公開日、上映劇場 2018年1月5日(金)~全国ロードショー

 

~いずれがキツネかタヌキか、油断ならない芸術的“詐欺映画”~

 

「詐欺」はもちろん、許されない犯罪である。近ごろ流行りの“ネット詐欺”など聞くだに腹立たしい。だけど「まるで芸術みたいな詐欺」もある、と聞いて映画『嘘八百』を見たら笑えた。近ごろ流行りの?異常な連続殺人などに比べると、こちらにはまだ人間味があるように思う。


usohapyaku-500-1.jpg映画『嘘八百』の舞台は大阪・堺。主演が芸達者な中井貴一と佐々木蔵之介、“茶の湯の聖地とされる堺で「あの千利休」の幻の茶器が発見された、という“大嘘”を聞けば、これはもう呆れかえって大笑い出来る、お正月の「初笑い」にふさわしい。さすが大阪、「よおやるわ」。


大阪・堺は千利休を生んだ“お茶”の聖地。そこへ「大物狙いながら」空振りばかりの古物商・小池則夫(中井貴一)が娘のいまり(森川葵)を連れてやって来た。ラジオの「西に吉あり」という占いに導かれて由緒ありそうな蔵のある屋敷にたどり着く。門から様子を伺うと主らしい男・野田佐輔(佐々木蔵之介)が帰って来て「蔵の中を見せてくれる」という。“わたりに船”と覗いたら、佐輔は「骨董の事は分からないという。これ一つで車が買えると聞いた」と言って見せた茶器を則夫は、一目で贋物と見抜き、売りつけた古美術店の名を聞いてその茶器を譲り受ける。


usohapyaku-500-2.jpg則夫は早速、その店を訪ね「素人に偽物をつかませた」ことをネタに高額で引き取らせる魂胆だったが、古物商店主の樋渡(芦屋小雁)もさるもの、店に出入りする大御所鑑定士の棚橋(近藤正臣)に軽くあしらわれてしまう。いずれがキツネかタヌキか、とんだ“化かしあい”が千利休を挟んで幕を切って落とす…。


蔵屋敷に再び呼ばれた則夫はある書状を見せられ、絶句する。それはなんと、利休直筆の譲り状。「譲り状」があれば茶器もあるはず…。逸る心を抑えて蔵の中を探すと「利休形見の茶器」が現れた。まぎれもなく本物なら「国宝級」。金額は「14億円」にまではねあがる。則夫は「蔵のもの全部、百万円で引き取りましょう」とすまし顔で申し出ると、佐輔も快く応じるのだった。


“化かしあい”はここからが本番。いったい、誰が本当で、誰が嘘つきなのか、セリフをじっくり聞きこんでしまう。こんな映画はやっぱり“詐欺師映画”ならでは、だ。


usohapyaku-500-3.jpg則夫が翌朝、支払いを済ませ、お宝を積んだ車を上機嫌で走らせていると、ラジオから「油断大敵」の声。不安にかられた則夫が箱を開けると、なんと茶器は真っ赤な偽物だった。大慌てで店に戻ると、屋敷の主は全くの別人(寺田農)で、佐輔は「留守番を任されていただけ」だった。このあたり、二重三重の“大嘘”合戦が実に面白い。


則夫は自分を惑わせた佐輔を見込んで「一世一代の大勝負」を持ちかける。則夫にはかつて、樋渡と棚橋に一杯食わされた過去があった。二人が仕掛けた一発逆転の大勝負は、文化、芸術の本家・文化庁をも巻き込み、前代未聞の大騒動に発展する…。壮大な嘘がいつバレるか、ハラハラどきどきしながら進む物語にいつしか引き込まれてしまう。


usohapyaku-500-4.jpgそんな魅力溢れる詐欺話を盛り上げるのがいつもながら、地元大阪のお笑い勢だ。お仲間役の坂田利夫(表具屋三代目)をはじめ、樋渡開花堂社長・芦屋小雁、文化庁・文化財部長・桂雀々に飲み屋「土竜」マスターの木下ほうか、博物館・学芸員の塚地武我、佐輔の妻役の友近といった愉快な面々が脇を固めている。これでも足りないとばかり“浪花の顔”MBSラジオ「ありがとう」から浜村淳が声の出演、元ボクシング世界チャンピオンの井岡弘樹もカメオ出演している、というまさしくコテコテの大阪喜劇に仕上がっている。ウーン、お見事。


この“詐欺師映画”、似たアメリカ映画を見た記憶が思い浮かんだ。ニコラス・ケイジ主演の『マッチスティック・メン』(03年、リドリー・スコット監督)がそれ。“極度の潔癖症”に悩みながらも、詐欺にかけては芸術的な手腕を発揮する中年男ロイ(ケイジ)。そこへ突然、14歳になっていた前妻の娘アンジェラが現れ、男の手腕に惚れ込み「弟子にしてくれ」と言い出す…。そんなアホな!


usohapyaku-500-5.jpgやっぱり、陰惨な“連続殺人”よりも、被害は金銭だけ。という詐欺師映画はより人間的なのだ。何しろ、実の娘が“跡継ぎ志願”するのだから、ロイの言う通り、一種の「芸術」として成り立っているのだろう。


ニコラス・ケイジは“娘の跡継ぎ志願”にやがて腰がひけて引退につながっていく。『嘘八百』でも家族内の問題にぶち当たってしまう。家族のつながりが「犯罪抑止」力になるのだ。「悪いことは受け継げるものではない」のだろう。


(安永 五郎)

公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/uso800/

©2018「嘘八百」製作委員会