原題 | 原題:Der kommer en dag 英題:The day will come |
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制作年・国 | 2016 年 デンマーク |
上映時間 | 1時間59 分 |
監督 | イェスパ・W・ネルスン |
出演 | ラース・ミケルセン、ソフィー・グローベル、ハーラル・カイサー・ヘアマン、アルバト・ルズベク・リンハート |
公開日、上映劇場 | 2017年9月2日(土)~テアトル梅田、以降 京都シネマにて公開 |
~夢が、明日への道をつくる…~
13歳のエリックと10歳のエルマーの兄弟は、母の病気で、少年ばかりの児童養護施設に預けられる。1960年代、デンマークのコペンハーゲンで実際にあった話を基に映画化。しつけという名のもと、子どもに対する体罰や虐待が横行し、子どもの人権という概念はまるでないような実態に、慄然とした。
二人は、入所したその晩に脱走を図るが、失敗して連れ帰される。先生が権力的で、従順を強いる施設では、子どもたちの中にもいじめがはびこり、年上の強い子が弱い子をいじめ、教師は見て見ないふりをする。エルマーは足が悪く、重いものを持てないし、早く走れない。石運びの作業が課せられ、できないと殴られる。正義感が強く、勝気なエリックも施設になじめず、二人は上級生のかっこうのいじめの的になる…。
子どもにとって、毎日を過ごす家は、本来、自分を守ってくれる、心休まる場所であるはず。なのに、いじめや暴力が日常茶飯事の場所で一日を過ごさなければならないとすれば、“こころ”の中に逃げ場をつくるしかない。エルマーにとって、それは宇宙であり、空だった。いつか宇宙飛行士になりたいという夢が心の支え。兄に助けられてばかりだった弱虫のエルマーが、少しずつたくましくなり、最後に見せる底力、決然たる行動に、涙を抑えずにはいられなかった。
児童虐待はあってはならない。授業もすべて施設内で行われ、外出も校長の許可なしにできない閉鎖的な施設では、外部からの検査や監査が大切な役割を果たすこと、唯一女性教師のハマーショイ先生が、学校のありように疑問を感じながらも、たてつくことができないでいたが、エルマーたちのことを思い続け、連絡をとりあっていたことが、希望へとつながる。大人一人ひとりがきちんと職責を果たすことの大切さも描かれる。
アポロが月面着陸した1967年に物語を設定した脚本が秀逸。エルマーの夢を馬鹿にしていた周りの子どもたちが、いつしかエルマーの話に聞き入り、勇気づけられていく。どんな境遇や環境でも、子どもの力は無限だ。想像力という翼で、どこまでも飛んでいける…。暴力をふるわれても、くじけず、傷だらけになっても反抗の意思を内に秘め、飛び立つ機会を狙い続けるエリックの強靭な精神。子どもたちの中に生まれる絆と連帯感。絶望と恐怖の中で、決して希望を見失わない二人の姿に果てしない可能性を感じた…。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://www.kittoiihigamatteiru.ayapro.ne.jp/
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