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『ハイジ アルプスの物語』

 
       

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作品データ
原題 Heidi 
制作年・国 2015年 スイス・ドイツ 
上映時間 1時間51分
原作 ヨハンナ・シュピリ 「アルプスの少女ハイジ」(講談社青い鳥文庫)
監督 アラン・グスポーナー
出演 アヌーク・シュテフェン、ブルーノ・ガンツ(『ヒトラー~最後の12日間~』)、イザベル・オットマン、カタリーナ・シュットラー、ハンネローネ・ホーガー
公開日、上映劇場 2017年8月26日(土)~YEBISU GARDEN CINEMA、シネ・リーブル梅田、9月2日(土)~OSシネマズ神戸ハーバーランド、 (近日)~京都シネマにて全国順次公開

 

これぞ“ハイジ”の決定版!
ハイジの故郷、スイスが国の威信をかけて実写映画化

 

今や“ハイジ”といえば日本の名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」(作:高畑勲・宮﨑駿)だろう。世界でも大人気のアニメ“ハイジ”が有名だが、本家本元のスイスが原作に忠実に実写映画化したのが『ハイジ アルプスの物語』である。女流作家のヨハンナ・シュピリが、スイス東部にあるマイエンフェルトを舞台に書いた児童文学小説「ハイジ」(1880年)は、これまで何度か映画化されているが、日本の名作アニメ版ほど広く浸透しているものはないだろう。そんな“ハイジ”ファンの期待を裏切らない、生き生きとした可愛らしいハイジに会えるのだから、見逃せない!


heiji-500-1.jpg“アルムのおんじ”役には、『ベルリン天使の詩』『永遠と一日』『ヒトラー~最後の12日間~』などで有名な名優ブルーノ・ガンツを。2005年版ではスウェーデン出身のマックス・フォン・シドーが演じていたので、今回は正真正銘のスイス出身の“おんじ”である。500人の中から選ばれたハイジ役のアヌーク・シュテフェンをはじめ、スイスの登場人物にはスイス人を、ドイツ・フランクフルトでの登場人物にはドイツ人を起用するというこだわりを見せている。監督は勿論スイス人。


heiji-500-2.jpg原作が同じなのだから当然なのだが、高畑勲が描いた物語の細かなシーンが今回も活かされている。特に、名作アニメ版で舞台となったアルプスの山々のシーンだ。おんじが住む山小屋の描写や、ペーターとハイジが山羊を放牧しに行く高原のシーンなど、懐かしい風景にTVアニメを夢中で観ていた頃を思い出す。ただ、牧羊犬のヨーゼフ(セントバーナード犬)の活躍が見られなかったのは、ちと寂しい気がした。


heiji-500-5.jpg両親を亡くしたハイジは、叔母に連れられスイスの山奥に住む父方の祖父“アルムのおんじ”の元へやってくる。初めはハイジを厄介者扱いしていたおんじだったが、ハイジの快活さに日々の暮らしが明るくなり、ペーターやその家族とも仲良くなり、いつの間にかかけがえのない存在となっていった。ところが、フランクフルトから叔母がやって来て、学校へ通わせないおんじの元ではハイジは育てられないと、無理やりハイジを連れていく。勝手につれて来て、勝手に連れ帰る叔母は、報酬のためにハイジが必要だった。フランクフルトのゼーゼマン家から病弱で車いすの生活を送る娘クララの学友として、クララより年下の女の子の要請を受けていたのだ。


heiji-500-6.jpg大自然の中でのびのびと暮していたハイジは、山も木も見えない大都会のお屋敷で、しかもこわ~い家庭教師のロッテンマイヤーさんの厳しい監視の下に置かれ、ホームシックになってしまう。優しいクララや執事のセバスチャン、クララのおばあさまなど、天真爛漫なハイジを大切にするが、心の病気はハイジから生気を奪ってしまう……。


heiji-500-4.jpg名作アニメ版の多くの感動シーンは本作でも登場する。実写ならではのスケールの大きなスイスアルプスの風景や、名優たちに綴られた愛情深いヒューマンドラマ、何といってもハイジとクララの純粋な信頼関係に心が洗われるようだ。ハイジが生きた19世紀の風情に浸りながら、ハイジの故郷であるスイス・サルガンス地方に想いを寄せて、ロケ地を訪ね歩く日々を夢見たいと思う。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.heidimovie.jp

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