原題 | Paris Pieds Nus |
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制作年・国 | 2016年 フランス・ベルギー |
上映時間 | 1時間23分 |
監督 | 監督・脚本:ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン |
出演 | フィオナ・ゴードン、ドミニク・アベル、エマニュエル・リヴァ、ピエール・リシャール、フィリップ・マルツ |
公開日、上映劇場 | 2017年8月19日(土)~シネ・ヌーヴォ、近日上映 京都シネマ、元町映画館 他全国順次公開 |
~身振りで会話する可笑しみがあふれだす~
『アイスバーグ!』(2005年)、『ルンバ!』(2008年)と、独特の作風で“ジャック・タチの後継者”と話題になったアベル&ゴードンの監督・脚本・主演の新作。
フィオナは、パリに住む叔母のマーサから、助けを求める手紙を受け取り、カナダの山奥からやってくる。セーヌ川で貴重品も全部鞄ごと失くしてしまい、マーサの姿も見当たらず、初めてのパリで、変なホームレスの男ドムにつきまとわれながら、てんやわんやの2日間を描く。
主演のドミニク・アベルとフィオナ・ゴードンは、道化師としてヨーロッパで活躍した経歴の持ち主。しゃんとした美しい姿勢ときりりとした身のこなしで繰り広げる、無表情のパントマイムのようなやりとりは、ユーモアたっぷり。セーヌ川の橋の上で、フィオナは、走ってきたランナーに写真を撮ってもらおうと、スマホを渡す。その場で足踏みしながらランナーがシャッターを押そうとしたら、フィオナもつられて足踏みをして…というふうに、一つの身振りが、また別の人に連鎖して、巻き起こる喜劇。こういう映画は、ぜひとも映画館で観て、他のお客さんが笑うツボと、自分の笑いのツボの違いを確めてみてほしい。セリフは少なく、コミカルな動きに魅せられる。
フィオナは、大きなバックパックを背負って、地下鉄の改札で、いきなりリュックが突っ掛って通れなくなったり、じたばたすればするほど状況が悪化したりの失敗の連続。でも、どこかユーモラスで、ヒステリックにもならない。ドムも、ゴミ箱を開けて食べ物を探したりしているけれど、エレガントで、プライドも高く、愛嬌がある。深刻な状況も跳ね返すようなユーモアと突き抜けた明るさが本作の魅力。隠れたり、追いかけっこになったり、軽快で楽しい動きに、自然と笑いがこみあげる。
老人ホームに入れられそうになり、それが嫌で、逃げまわるマーサをエマニュエル・リヴァがコミカルに茶目っ気たっぷりに演じ、可愛らしい。人生の哀愁も感じさせ、ほろりとさせられる。ピエール・リシャールとベンチに並んで座って、足だけで踊るダンスは、見どころの一つ。
フィオナやドムの服の色をはじめ、原色が鮮やかで、画面の色遣いにもご注目。劇中で流れるフォークソング「The Swimming Song」(Kate & Anna McGarrigle)の、泳ぎに行っておぼれかけて、でも、息を止めて足で水を蹴って、腕で水をかいたという歌詞のように、大変な状況でもユーモアという馬鹿力で突き抜けようとする力強さと人生への愛情にあふれた逸品。ぜひ映画館で浸って、思い切り笑って、夏の疲れを吹き飛ばしてほしい。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://www.senlis.co.jp/lost-in-paris/
©Courage mon amour-Moteur s'il vous plaît-CG Cinéma