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『少女ファニーと運命の旅』

 
       

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作品データ
原題 Le voyage de Fanny   
制作年・国 2016年 フランス・ベルギー合作
上映時間 1時間36分
原作 ファニー・ベン=アミ
監督 ローラ・ドワイヨン
出演 レオニー・スーショー、セシル・ドゥ・フランス、ステファン・ドゥ・グルート、ライアン・ブロディ
公開日、上映劇場 2017年8月11日(金)~大阪ステーションシティシネマ、シネ・リーブル神戸、順次~京都シネマ ほか全国順次公開

 

~子どもたちだけでナチスの迫害から逃れた実話~

 

ナチス占領下のフランスで、子どもも含め1万2千人以上ものユダヤ人が一斉検挙され収容所に送られたヴェル・ディヴ事件が起きたのは1942年7月16日。本作は、1943年、ユダヤ人の子どもたちだけでスイスまで逃れ、生き延びたファニー・ベン=アミの自伝を基に、ジャック・ドワイヨン監督の娘であるローラ・ドワイヨン監督が映画化。


fanny-500-4.jpg13歳のファニーは、両親と別れ、幼い二人の妹たちと、支援組織の施設に預けられていたが、心無い密告により施設は閉鎖。イタリア、スイスとの国境近くのムジェーブに移る。ファニーは料理番の青年エリーと出会い、一緒にラジオを聞いたり、仲良くなるが、情勢はさらに悪化。施設の責任者マダムは子どもたちをスイスに逃そうと列車に乗せる。大人は一緒に乗って行けないと言われ、不安と心細さでいっぱいの時、マダムはファニーに、あなたがリーダーだと告げる。ドイツ兵に捕らえられたら命がない、危険だらけの旅が始まる…。


fanny-500-3.jpg映画は、子どもたちの目線で、生き生きと丁寧に追っていく。ファニーを含め9人の子どもたちは、途中でマダムと連絡さえ取れなくなり、頼りになる大人はおらず、皆、バラバラ。警察の検閲に捕まり、空腹と恐怖で、ファニーはとうとう仲間の男の子と取っ組み合いの喧嘩をしてしまう。でも、雨降って地固まる…。幾つもの苦難を乗り越えていくうちに、子どもたちの結束も強まり、本音で、お互いに好きなことを言い合い、助け合うようになっていく。


fanny-500-2.jpg子どもたちが、やっとのことで川を見つけ、走り寄って顔や身体を洗っているうちに、いつのまにか水をかけあって、水遊びになったり、あどけない表情がまぶしく、朗らかな笑い声に緊張がほぐれる。夜、ベッドで、そっと古いカメラを取り出し、ファインダーをのぞいて、両親との楽しい思い出に浸るファニー。くじけそうになっても、耐えることができたのは、ドイツ兵に捕まったエリーから、必ずスイスに届けるように頼まれた手紙のおかげ…。強い友情の絆は、ファニーに、自分でも思ってもみなかった力を呼び起こしてくれる。


病気で寝込んだときには、見知らぬフランス人の大人に手を貸してもらう。ヴェル・ディヴ事件の時にも、何千人もの匿名のフランス人がユダヤ人を助けたといい、戦時下で、人が人を助ける姿は心あたたまる。


fanny-500-1.jpgいつも幼い女の子と一緒にいる、ヴァイオリンを抱えた心優しい少女ディアヌの大人びた、柔和な表情といい、皆、個性的。子どもは、大人に比べれば、身体も小さく、力も弱い。でも、幼い子をおんぶして走ったり、ぐずりだせば、なだめて励ましたり、全員が助け合いながら、歩きとおし、駆け抜けていく姿のどんなに力強いことか。ファニーの諦めない心が希望につながったことに胸が熱くなる。


(伊藤 久美子)

公式サイト⇒ http://shojo-fanny-movie.jp/

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