原題 | Les innocents |
---|---|
制作年・国 | 2016年 フランス=ポーランド |
上映時間 | 1時間55分 |
監督 | アンヌ・フォンテーヌ |
出演 | ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、ヴァンサン・マケーニュ、ヨアンナ・クーリグ |
公開日、上映劇場 | 2017年8月5日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、8月26日~京都シネマ 他全国順次公開 |
~力をあわせて受難を乗り越える、勇気あふれる実話~
第二次世界大戦終結後、1945年ポーランドでの衝撃の史実を、実在の医師マドレーヌ・ポーリアックをモデルに描いた作品。赤十字の医療センターで働いていた若き医師マチルドのところに、若い修道女がやってきて、診療に来てほしいと頼む。管轄違いとはいえ、熱意にひかれたマチルドは、遠く町はずれにある修道院を訪ねると、若い女性が陣痛で苦しみ、泣き叫んでいた。マチルドは、緊急の帝王切開で母子を救い、翌日、様子を見にいくと、他の修道女も妊娠していることがわかる。そこで知らされたのは、ポーランドからドイツ軍を駆逐したソ連兵による蛮行。このことが世間に知れたら、修道院が閉鎖され恥をさらすから、内密にしてほしいと院長に頼まれる。
肌を見せるのは罪になるというカトリックの厳しい教えを守り、診察さえ拒む修道女。恨んでもいいはずのソ連兵を憎むことなく、神に仕える身でありながら妊娠してしまった残酷な現実を、神の試練として受け止めようと悩み、医学的知識もないまま痛みに耐えるシスターたち。その真摯な姿に、マチルドは心打たれ、命を救おうと決意し、女性ひとり、赤十字のジプシーに乗って、夜の森を通り抜け、ソ連軍のバリケードをかいくぐる危険を冒し、修道院に通うことになる…。
何人ものシスターたちが身重の姿に驚かされるが、映画は、ドラマチックにすることなく、マチルドの視点で淡々と描いていく。シスターたちの戸惑いも悩みも、マチルドという相談相手を得た喜びも、等身大で伝わってきて、深く静かな感銘を共にする。ポーランド語とフランス語という言葉の壁や、信仰の違いを越えて、同じ女性同士が信頼し、心が通い合う‥その絆の尊いこと。修道院で唯一フランス語が話せるシスター・マリアとマチルドが本音を打ち明けあう姿も微笑ましい。
ポーランドの廃屋となっていた修道院で撮影され、陰影豊かな映像の中で、ベールをかぶったシスターたちの整った目鼻立ちのなんと美しいこと。恐怖で戦慄するような体験を前向きに乗り越えていこうとする勇気と力強さと、マチルドの知恵、新しく生まれくる命の尊さと、命を受け入れようとするシスターたちの優しさ、心の清らかさに深く打たれる。2017年のフランス映画祭でエールフランス観客賞を受賞した注目の力作。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://yoake-inori.com/
(C)2015 MANDARIN CINEMA AEROPLAN FILM / ANNA WLOCH