原題 | A STREET CAT NAMED BOB |
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制作年・国 | 2016年 イギリス |
上映時間 | 1時間43分 |
監督 | ロジャー・スポティスウッド |
出演 | ルーク・トレッダウェイ、ボブ、ジョアンヌ・フロガット、ルタ・ゲドミンタス、アンソニー・ヘッド、キャロライン・グッドオール、ダレン・エヴァンス他 |
公開日、上映劇場 | 2017年8月26日(土)~新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、109シネマズ二子玉川、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹ほか全国ロードショー |
奇跡のサクセスストーリーを呼び起こしたのは、
なんと一匹のノラ猫だった!
ロンドンでストリートミュージシャンとして歌っているジェームズ(ルーク・トレッダウェイ)は、ドラッグ中毒が原因で親と疎遠になり、住む家はなく、毎日の食事代を捻出するのも大変な身の上だ。彼の更生を指導しているNPO団体のヴァル(ジョアンヌ・フロガット)の尽力で、低所得者層向けのアパートを提供されたのだが、そんな彼のもとに現れたのが、怪我をしている茶トラの雄猫だった。そのままにしておけず、動物病院に連れてゆき、父親からもらったなけなしのお金で薬代を払うジェームズだったが、この猫との出会いが思いも寄らぬ転機となる…。
“犬は人につき、猫は家につく”といわれるが、猫と同居したことがある人なら、「そんな一方的な話はありませんがな」ということになる。マイペースで、飼い主が望むような反応をいつも示すわけではないが、何かを訴えるような表情をしたり、子どものように甘えてきたり…。時にはこの映画のボブのように、人助けまでやってしまう猫だっている。いわゆる美談ではあるけれど、動物に備わっている不思議なパワーについて考えざるをえない。心と体に傷を負ったジェームズを見守るように、あるいは励ますように、ボブはジェームズのそばに定住してしまう。まるで、ジェームズにはボブが絶対に必要であることをちゃんと知っているかのようだ。
一方で、ドラッグの誘惑の恐ろしさ、そこから抜け出すための苦しさ、中毒患者やホームレスに対する世間からの冷酷な目という暗部もしっかりと描き込まれている。食堂でお金が足りず、すがるような目つきのジェームズに対して為された仕打ちは実に酷い。アパートの隣人女性ベティ(ルタ・ゲドミンタス)が抱え持つ癒されぬ悲しみも絡み合い、単純なハッピーストーリーではないところに惹かれた。
映画のほとんどのシーンで、ボブ“ご本猫”を演じているのは実在の猫ボブだそうだが、表情が豊かで何とも愛くるしい。ジェームズとハイタッチするところなど、猫好きならずとも笑みを誘うだろう。ボブの視界からとらえたシーンが随所にあり、これはなかなかの工夫だなと思う。
ボブはイギリスで最も有名な猫となり、この映画のキャンペーンで来日も果たすというから凄い!ちなみにジェームズは『ボブという名のストリート・キャット』という本を出し、それがベストセラーになってこの映画化ともなったのだが、ホームレスから一転、悠々自適かと思えば、収入の大半を慈善団体に寄付して今も街角で歌っているという。そこが凄い。ボブにとてもよく似ていて、天国に行っちまったわが愛猫を思い出しつつ、こういう“猫の手を借りたい”などという願望がちらっと胸をかすめたのだった。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://bobthecat.jp/
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