原題 | Fai bei sogni |
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制作年・国 | 2016年・イタリア・フランス・ |
上映時間 | 2時間10分 |
原作 | マッシモ・グラメッリーニ(『甘き人生』) |
監督 | マルコ・ベロッキオ |
出演 | ヴァレリオ・マスタンドレア、ベレニス・ベジョ、エマニュエル・ドゥヴォス |
公開日、上映劇場 | 2017年7月29日(土)~シネ・リーブル梅田、8月19日(土)~シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマ |
~母を喪った少年が、歳月を経て、再び母の死と向き合うまで~
イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督が、ジャーナリストのマッシモ・グラメッリーニの自伝的小説『甘き人生』を基に映画化。幼くして最愛の母を亡くした少年が、深い衝撃で悲しみから抜けられないまま大人になり、一人の女性との出会いを通じて、少しずつ心を開いていき、母の死と向き合えるようになるまでを描く。
マッシモは9歳の時、一緒にロックンロールを踊ったり、深夜テレビを見たり、ずっとそばにいてくれた美人で明るい母がいきなり姿を消す。父も親戚も誰も、どうして母がいなくなったのか教えてくれない。マッシモは母の喪失を受け入れられず、心を閉ざしたまま、ジャーナリストとなるが、封印したはずの母の記憶は、取材現場で人の死に立ち会うたび、マッシモを苦しめる。パニック障害を起こして駆け込んだ病院で精神科医のエリーザと出会い、笑顔や感情を取り戻していく…。
映画は1939年、マッシモが母の隣で楽しそうに踊る姿から始まる。母がいなくなった途端、少年はふくれっ面になる。父にもまわりの大人にも攻撃的になり、深夜のテレビドラマに出てきたベルファゴールという魔女だけが唯一の守護神。甘えたい年頃なのに自分一人の世界にひきこもり、寂しさに耐える表情がいじらしい。
カトリック系の学校に通うようになったマッシモは、神父に、死や神について熱心に問いかける。「もしもママが…」と言うマッシモに、神父は、「もしも」は敗者の印で、「にもかかわらず」が勝者の印だと教え、勇気を出すように諭すが、マッシモの心の闇が晴れることはない。
映画は、1999年、マッシモが遺品を整理するため生家に戻ってくる様子や、子どもの頃を交錯させながら、母を亡くしてから30年間のマッシモの人生をたどっていく。当時のテレビ映像や、マッシモが働く現場を通して、イタリアの時代の移り変わりも描き出される。大人のマッシモを演じるヴァレリオ・マスタンドレアの、心はここにないかのような遠い目が、深い悲しみを伝える。
母の亡くなった晩、窓の向こうでは、雪が降っていた。エリーザが夜のプールで高飛び込みを練習するシーンも美しく、落下をイメージする映像は何度か繰り返される。マッシモと母が隠れんぼをして遊んだ時の暗闇と光が交錯する場面は、まさにこの映画の白眉。母の死を受け入れ、母との深い絆を確かめることができたからこそ、マッシモの心に降り積もった哀しみの雪は、やがてゆっくりと溶けていく予感を残して、映画は終わる。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://www.amakijinsei.ayapro.ne.jp/
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