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『ローマ法王になる日まで』

 
       

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作品データ
原題 Chiamatemi Francesco - ll papa della gente.
制作年・国 2015年 イタリア 
上映時間 1時間53分
監督 ダニエーレ・ルケッティ
出演 ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、セルヒオ・エルナンデス、ムリエル・サンタ・アナ他
公開日、上映劇場 2017年6月17日(土)~シネ・リーブル梅田、24日(土)~シネ・リーブル神戸、8月5日(土)~京都シネマ他順次公開
 

~弱きものに寄り添い続けるローマ法王フランシスコ1世、激動の半生に迫る~

2017年5月、トランプ大統領と、その移民政策や環境政策を批判していたローマ法王フランシスコ1世の直接会談が行われ、話題になったことはまだ記憶に新しい。『我らの生活』のダニエーレ・ルケッティ監督が、ただ神の前で平和を祈るだけではなく、行動に移す“ロックスター”法王の半生を事実に基づいて描いた壮大なヒューマンドラマ。1938年、アルゼンチン・ブエノスアイレスで生まれたイタリア移民の子、ホルヘ・マリオ・ベルゴリオが辿る人生は、暗黒時代を含めたアルゼンチンの歴史をも浮かび上がらせる。
 
 
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大学で化学を学んでいたホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)は、自分の使命に目覚め、周りから「お前が聖職者に?」と言われながらも、恋人に別れを告げ、イエズス会に入会する。順調にキャリアを積み、35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命されたベルゴリオだが、軍事政権による独裁政治が民衆や教会を窮地に陥れていくのだった。  
 
 
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1976年から83年までの独裁政権時代は、ベルゴリオにとっても、アルゼンチンにとってもまさに暗黒の時代だった。反勢力として捕えられそうな学生たちを匿い、真夜中に避難させ策が功を奏することもあれば、教会内の密告者により窮地に陥れられることもある。反政権という烙印のもと、罪のない庶民や聖職者が殺されていく。軍の圧力の前では、教会すら沈黙せざるをえないのか。自らが何をすべきか、何ができるのか。その限界にぶち当たりながら自問自答するベルゴリオを、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ(『モーターサイクル・ダイアリーズ』)が熱演している。85年、失意の中、ドイツ留学中に出会った「結び目を解くマリア」の絵の前で涙するベルゴリオの姿は、過去の暗黒時代に戻ってはいけないという未来への強い決意のようにも映るのだ。
 
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アルゼンチンに戻ってからは、補佐司教としてブエノスアイレスの貧困地区で、地区の人々のために共に活動してきたベルゴリオ。今の“ロックスター”法王につながる庶民派の一面は、この時代の経験によるところも大きいのだろう。苦難の中、教会関係者だけでなく街の人々と支え合いながら自らの使命を貫き、今や中南米出身者初のローマ法王となったフランシスコ1世。その存在こそが、混乱極まる世界の中の光だと再認識するし、ファンにならずにはいられない!今まで東京国際映画祭では度々作品が紹介されていたダニエーレ・ルケッティ監督だが、法王の波瀾万丈の半生とアルゼンチン苦難の時代を力強く描いた本作は、代表作としてそのフィルモグラフィーにも我々の心にも名を残すことだろう。
(江口由美)
 
 
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公式サイト⇒http://www.roma-houou.jp/
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