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『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

 
       

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作品データ
制作年・国 2017年 日本 
上映時間 1時間48分
原作 最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』リトルモア刊
監督 ・脚本:石井裕也
出演 石橋静河 池松壮亮/佐藤玲 三浦貴大 ポール・マグサリン/市川実日子/松田龍平/田中哲司他
公開日、上映劇場 2017年5月27日(土)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、MOVIX京都他全国順次公開

 

~詩情豊かな映像で綴る、都会で生きる男女の孤独と希望~

 
冒頭から、東京の夜景が詩情豊かに映し出され、ふわりと物語に誘われていく。原作は最果タヒの詩集だが、映画版で描かれるのは私たちと地続きの、息苦しさを抱えて生きる人間たち。『舟を編む』『ぼくたちの家族』の石井裕也監督が、東京で生きる若い男女が、もがきながら心の拠り所を見つけていく様を、独特の表情豊かな演出で紡ぎ出している。主人公たちの心の中に入り込むような感覚が心地よい作品だ。
 
 
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看護師として働きながら、夜はガールズバーで作り笑いを浮かべる美香(石橋静河)と、日雇い労働者で、左目がほとんど見えない慎二(池松壮亮)。東京という大都会で、家族と離れ孤独な美香と、日雇い労働者仲間に囲まれていても、将来が見えず漠然とした不安を抱える慎二が出会い、偶然に再会し、二人でビルの隙間から見える青白い月を眺める。夜空の下では少し素直になれる二人の距離が近づいたり、さりげなく日ごろは他人に言えないような本音を漏らしたり。そんなささやかな瞬間が少しずつ積み重なる様に、胸が熱くなる。
 
 
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様々な境遇、年齢の日雇い労働者仲間たちと暮らす慎二の日常の描写は、ラブストーリーだけではない、底辺を生きる男たちのささやかな幸せと絶望を滲ませる。死が隣り合わせの危険な仕事、脱落すれば二度と会えないかもしれない仲間たち。田中哲司演じるコンビニの姉ちゃんをデートに誘うことだけが楽しみな孤独な日雇い中年労働者も登場させるあたりは、石井監督ならではの視点を感じる。単なる青春ストーリーではなく、人間賛歌、その底辺にあるリアリズムにも肉薄する手腕を発揮し、ヒリヒリさせられる瞬間が何度も訪れるのだ。
 
 
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いつになく早口、ハイトーンで、どこか落ち着きがない慎二を演じる池松壮亮は、今までにない新たな魅力を発揮している。本作が初主演となる美香役の石橋静河を見事に支え、常に神経を張り巡らしている美香役とのコントラストも見事だ。自分は人とは違って変わっていると感じ、居場所がないように思えた二人。最後にささやかな幸せを見つける様が眩しい。二人が度々目にした路上の女性シンガーが、「がんばれ」と謳いあげるメロディーは、応援歌のように映りもするが、その女性シンガーも最後は成功を手にし、シンガーの姿がラッピングされたツアートラックが通り過ぎる。ささやかな悦びと共に生きる人たちの横で、東京で大きな夢を掴む人もいる姿を敢えて見せた石井監督。どちらになろうとも、自分の居場所を見つければ、それは大きな希望になる。そんなメッセージに思えた。
(江口由美)
 
公式サイト⇒http://www.yozora-movie.com/
(C) 2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会