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『カフェ・ソサエティ』

 
       

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作品データ
原題 Cafe Society  
制作年・国 2016年 アメリカ 
上映時間 1時間36分
監督 監督・脚本:ウディ・アレン『ミッドナイト・イン・パリ』『ブルージャスミン』
出演 ジェシー・アイゼンバーグ(『ローマでアモーレ』『グランド・イリュージョン』)、クリステン・スチュワート(『トワイライト』シリーズ、『パーソナル・ショッパー』)、ブレイク・ライブリー(『ロスト・バケーション』『アデライン、100年目の恋』)、スティーブ・カレル(『フォックスキャッチャー』)
公開日、上映劇場 2017年5月5日(金・祝)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、TOHOシネマズ二条、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー

 

ムズキュンな恋と死体と家族劇と、人生の皮肉。
甘くほろ苦い名匠監督の新作に、みぞみぞする。

 

ほぼ1年に1作のペースで映画を撮り続けている名匠ウディ・アレン監督の新作は、傷心のうちにハリウッドを去り、ニューヨークの名士となった主人公ボビーと運命の女性の皮肉な再会のドラマ。タラレバが付きものの人生の選択…永遠に失ったものと手に入れたもの、あるいは甘すぎない恋のかがり火は儚げに揺らめく。ハリウッドとは相思相愛にはなれないアレン監督は、ニューヨークで成功を収める“自分の分身”ボビーを自虐的に弄して笑いを誘う。つらい恋をしても、また人は誰かに恋をする。性懲りもなく。だからと言って、同じ名前の女性と恋に落ちるなんて。しかも恋敵は…!

 
cafesosiety-500-1.jpg1930年代。ハリウッドの大物プロデューサー、叔父フィル(スティーヴ・カレル)を頼って、ニューヨークはブルックリンの下町を飛びだした青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)。これという才能も目標もないが、ギャングの兄ベンや小さな宝石店店主の父とも違う生き方をみつけようとして。そんなボビーが、叔父の秘書ヴェロニカことヴォニー(クリステン・スチュワート)にひと目ぼれ。美人で気立ての良いガールネクストドアの彼女に恋人がいると知っても、一度燃え上がった恋の炎は消せやしない。燃え尽きる以外には…。かくして恋する純情青年は、やり手のフィルの雑用係を立派に務めデキル男へと成長していく。ところが、まさかの9回裏2アウトからのメークドラマで敗北を喫するのだ。ボビーの心を、シャンパンみたいにとろけさせたヴォニーは、富も名声も手に入れた年上の元カレとよりを戻してしまう。

 
cafesosiety-500-2.jpg意気消沈のボビーは帰郷し、兄ベンが腕ずくでものにしたナイトクラブ(前経営者はコンクリート詰め)でマネージャーとなる。奇しくも、はったりとゴシップと自慢話とラブアフェア、つまりはエゴが原動力の街ハリウッド仕込みのコミュ力の高さでセレブ御用達の一流店に育て上げ、口説き落としたブロンド美女(ブレイク・ライブリー)と幸福な家庭を築き、まさに人生の最盛期にあった。そんなある日、美しく着飾ったヴォニーが父親ほど年の離れた夫フィルとともにクラブへやってきて…。

 
cafesosiety-500-5.jpg離婚を決意した叔父とヴォニーの仲を結果的には取り持つことになる、とほほなロマンチスト、ボビーに扮したジェシー・アイゼンバーグは、いかにもハリウッド的なエピソードのひとつ、女優の卵との押し問答シーンで、まさに水を得た魚。トップギアの言い回しの上手さと演技力が、チャーミングに炸裂する。シャネルのドレスを着こなしたゴージャスな2人の美女ヴェロニカとのムズキュンな恋の駆け引き、さらに下町ユダヤ人一家(母親役ジーニー・バーリンが笑える)のホームコメディーで“幕間”を飾ったこの作品で、アレン監督と初めてコンビを組んだ撮影監督ヴィットリオ・ストラーロが初のデジタル撮影を敢行。黄金期を迎えた30年代ハリウッドの内幕(名画の名シーンや、銀幕のスターも登場。)とニューヨークの華やかなナイトライフを魅惑的な映像に収め、『検証せぬ人生に価値なし…しても、同じだけどね』など茶目っ気あるアレンのナレーションには、ステデイカムを使用したりと技巧を凝らしている。


(柳 博子:映画ライター)

公式サイト⇒ http://movie-cafesociety.com/

Photo by Sabrina Lantos (C) 2016 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

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