原題 | PASSENGER |
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制作年・国 | 2016年 アメリカ |
上映時間 | 1時間56分 |
監督 | 監督:モルテン・ティルドゥム(『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』) 脚本:ジョン・スペイツ(『ドクター・ストレンジ』『プロメテウス』) |
出演 | ジェニファー・ローレンス(『世界にひとつのプレイブック』『ハンガー・ゲーム』シリーズ)、クリス・プラット(『ジュラシック・ワールド』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ)、マイケル・シーン(『フロスト×ニクソン』)、ローレンス・フィッシュバーン(『マトリックス』『オセロ』) |
公開日、上映劇場 | 2017年3月24日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ(なんば、二条、西宮OS) 他全国ロードショー! |
人類の夢を乗せた豪華宇宙船の旅。
過酷な運命が待ち受ける2人、90年も早く目覚めてしまった意味とは?
豪華客船のような巨大な宇宙船にたった一人きりになってしまったらどうするだろう。食料も娯楽施設もあったとしても、はたして宇宙空間での孤独に堪えられるだろうか?
地球と同じ環境の惑星移住のため5000人の乗員乗客を乗せた宇宙船アヴァロン号が地球を出発して30年。120年間冬眠状態で移動するはずが、予期せぬ事故で宇宙船の一部が破損、ジム(クリス・プラット)一人だけが90年も早く目覚めてしまう。生きて惑星到達は無理。1年経過後、孤独に耐え兼ねてオーロラ(ジェニファー・ローレンス)という女性を目覚めさせてしまう。ジムは故意に目覚めさせた秘密を抱えながら彼女への想いをつのらせていくが、そこには絶体絶命の大きな危険が待ち受けていた。
たった一人で宇宙から地球へ帰還するサバイバルを描いた『ゼロ・グラビティ』(‘13)や『オデッセイ』(‘15)では、それぞれの孤独な奮闘ぶりと諦めない強い精神力、さらには科学的実証に基づいたリアルな映像に感動させられた。そして今年は、120年かけて宇宙旅行する壮大なスペースアドベンチャー『パッセンジャー』に心つかまれることだろう。まず、空前絶後の巨大空間を持つ豪華宇宙船に圧倒される。スタイリッシュなデザインの部屋やオートマシンから提供される食事、心にくいほどの気配りで人間の心を癒すアンドロイドなど、至れり尽くせりのゴージャスぶりだ。
だが、エコノミークラスのジムに対し、ファーストクラスのオーロラとは食事も部屋の形態も違う乗客ランクで区別されていることにも注目したい。地方出身のエンジニアのジムは新しい惑星で自分の技術を活かした家を建てたいと願っていた。一方オーロラはNY在住の有名小説家の娘で自身も新天地での新生活を記録したいという希望を抱いていた。地球では住む世界が違う2人が、巨大な宇宙船でたった2人だけの生活を送ることになるとは。宇宙船ならではの楽しみ方をオーロラに伝授するジム。次第に心惹かれるようになるオーロラだったが、その信頼が崩れる真実を知ってしまい……。
主役を演じた2人の対比がまたロマンスを盛り上げる。クリス・プラットのタフガイだけどナイーブというキャラに対し、ジェニファー・ローレンスは知的でゴージャスな美しさで終始魅了する。2人の間を取り持つアンドロイドのアーサーを演じたマイケル・シーンもいい味を出している。いつも明るい笑顔と巧みな話術で楽しませてくれるアーサーの存在は大きい。徐々に2人の距離が短くなるツールやオートマ化された船内設備など、驚きと笑いに満ちたロマンチックな雰囲気は本作の大きな特徴といえる。
だが、それを大きく揺るがす異変が起こり始める。オーロラが一人プールで泳いでいた時に突然無重力状態になったシーンが凄い。初めて見る映像に思わず感嘆の声をあげてしまった。他にも、宇宙船から眺める美し過ぎる宇宙の映像やダンスしているような宇宙遊泳のシーンなど、夢砕かれた2人の運命を呪うより、生かされた喜びを満喫しているような映像に心救われる。人類の進化を象徴的に描いた傑作『2001年宇宙の旅』(‘68)とは全く異なる、愛と勇気の物語に心揺さぶられる宇宙の旅が体験できる。
(河田 真喜子)