制作年・国 | 2016年 日本 |
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上映時間 | 1時間24分 |
監督 | 監督・脚本:熊谷まどか |
出演 | つみきみほ、田島令子、眞島秀和、木乃江祐希 |
公開日、上映劇場 | 2017年3月11日(土)~有楽町スバル座、3月25日(土)~テアトル梅田 他全国順次公開 |
~こだわりを手放したとき見える景色~
レイコ(つみきみほ)は売れない女優。ある日、母親が認知症にかかってしまう。幻覚を見るようになるユキエ(田島玲子)。それは、かつて飼っていた犬である。しかも、その犬はしゃべる。
女優としてはパッとせず、主に演技指導をしているレイコだったが、ある日、活躍中のかつての仲間・三田(眞島秀和)から映画に出てみないかと誘われる。そんな折、母親の認知症が発覚する。やむにやまれず、監督との顔合わせにユキエを伴うレイコ。そこにはベビーカーに乗った子どもを連れた山本(木乃江祐希)がいた。たくまずして二組の親子が一堂に会し、三世代の女の思いが交錯する。マザーズバッグをひっかき回し企画書を取り出す山本。子育てに奮闘する様子に若き日の自分を重ねるユキエ。そのどちらでもないレイコの表情はどこか所在なさげでもある。
つみきみほはハッキリした顔立ちにショートカットの、いくつになっても少年のような印象だが、プライベートでは女優の傍ら介護の仕事もしているという。まさにこの作品は彼女自身を描いているようだが、レイコと違っているのは出産、子育てもしている点。面白いのはつみきが、映画監督の山本の役柄にムッとしたというところ。作品のなかでは、つねにしっちゃかめっちゃかな印象で正直、羨むポイントがわからない山本なのだが、子育て中、仕事を休んだこともあったつみきは、甘えられるところは甘えてでも突き進む山本をうらやましいと思ったそう。みんな、ひとつの人生しか生きられないから、他人が要領よくやっているように見える。逆に他人から見たら自分だってそう見られているのかもしれない。
母親の幻覚は、フラダンスをする人や宇宙人、幼い頃の娘などバラエティに富んでいるが、とくに犬に怯えるのだった。終盤、その理由が明かされる。母と娘がはじめて親子ではなく、女同士語らう場面だ。そして、タイトルが初めて意味を持つ。同時に、介護と映画、演技者と指導者、どっちつかずだったレイコの心が決まる。
話す犬を放したあとの二人の姿は清々しく、新しい地平を切り開く予感に満ちている。
(山口 順子)
公式サイト⇒ http://hanasuinu.com/
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