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『哭声/コクソン』

 
       

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作品データ
原題 The Wailing  
制作年・国 2016年 韓国
上映時間 2時間36分
監督 ナ・ホンジン(『チェイサー』『哀しき獣』)
出演 クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村 隼、チョン・ウヒ
公開日、上映劇場 2017年3月11日(土)~シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸 他全国ロードショー

 

心の闇が生み出す錯覚や幻。
不安や恐怖にかられた者が目にする悪霊とは?

 

『チェイサー』(2008)で連続殺人犯の執拗な恐怖で世界を震撼させたナ・ホンジン監督。その後の『悲しき獣』(10)以来6年ぶりの新作は、人の心の闇が生み出す“悪の姿”があらゆる惨劇を生む恐怖を描いている。『悪魔を見た』(10)や『黒く濁る村』(10)など韓国映画界が生んだ恐怖の名作は、偏見や妬み・嫉みと人間社会のひずみが背景となっていることが多い。山あいの小さな村にひとりの日本人がやって来たことから起こる連続一家惨殺事件。つのる不安と恐怖。単純な暴力的恐怖ではなく、観る者の心の闇にも迫る、身も心も凍てつく怒涛の2時間半!


kokuson-500-1.jpg山あいの小さな村で発生した一家惨殺事件。それまで平穏な日々を送っていた警官・ジョング(クァク・ドウォン)は、一家の主が家族を惨殺するという事件におののきながらも、捜査に乗り出す。最近山に住み着いた日本人の男(國村 隼)が怪しいという噂が流れる。今度は、主婦が家族を惨殺する事件が起こる。いずれの犯人も、白く濁った眼に皮膚がただれて、意識朦朧としていた。そして、ジョングは、一人娘にも皮膚のただれを発見してしまい、何がなんでも可愛い娘を守ろうとあたふたしながら奔走する。


kokuson-500-5.jpgジョングは、猟師が目撃したという獣のように鹿を喰らう男の噂を聞いて、不気味さと不安と恐怖が入り混じる中、若い女(チョン・ウヒ)に導かれるまま踏み入った殺人現場で噂の男に出くわす。いよいよ娘の様子がおかしくなり、祈祷師(ファン・ジョンミン)に依頼して悪霊払いをしたり、山狩りをして謎の男を追い詰めたりするが……。

 
kokuson-500-3.jpg『アシュラ』『弁護人』と容疑者を拷問する権力側の人間を、犯罪者より凶暴に演じてきたクァク・ドウォンの、初めての主演作である。娘を愛するあまり、小心な父親が暴走する姿を、ある時は滑稽に、ある時は壮絶に全身全霊で体現している。謎の日本人を演じた國村隼の不気味さも尋常ではない。悪霊なのか、悪霊に憑りつかれているだけなのか。いつ登場するかとやきもきした祈祷師役のファン・ジョンミンもまた、善か悪かの疑問を残す。


kokuson-500-4.jpg人は心の命ずるままに行動し、心に思うままを見てしまう。見たいものを、自分にとって都合のいいように見てしまうのだ。写真や身に付けていた物を使って魂をコントロールする悪霊なのか――。サスペンス・スリラーで始まり、『エクソシスト』や『オーメン』のようなオカルト・ホラーに変化していく異色大作。韓国映画界にまたしても恐怖映画の名作が生まれた。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://kokuson.com/

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