映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』

 
       

MissPeregrine-550.jpg

       
作品データ
原題 MISS PEREGRINE'S HOME FOR PECULIAR CHILDREN
制作年・国 2016年 アメリカ 
上映時間 2時間7分
原作 ランサム・デムズ著『ハヤブサが守る家』東京創元社刊
監督 ティム・バートン
出演 エヴァ・グリーン、エイサ・バターフィールド、エラ・パーネル、サミュエル・L・ジャクソン、テレンス・スタンプ、ジュディ・デンチ他
公開日、上映劇場 2017年2月3日(金)~全国ロードショー
 

~根底にあるのは“奇妙さ”への愛。ティム・バートン印炸裂のダーク・ファンタジー~

 
ダーク・ファンタジーにアドベンチャー要素が加わり、子どもだけでなく大人もワクワク、ドキドキするようなティム・バートンの世界観。思い返せば、在りし日の大阪を代表する名画座だった大毎地下劇場で、B級映画とタカをくくって観た『シザーハンズ』(90)に魅了されて以来、私は、ティム・バートン監督ならではの悲哀を交えて描くダーク・ファンタジーの世界のファンだ。ランサム・デムズが11年に発表したベストセラー『ハヤブサが守る家』が原作の本作は、『チャーリーとチョコレート工場』(05)のように実生活では冴えない少年ジェイクが主人公で、多くの個性的な子どもが登場する。この“奇妙な”こどもたちの造詣も含めて、バートン監督の彼らに対する深い愛を感じる作品。ジェイクの冒険は、本当の自分の居場所を探す旅でもある。
 
MissPeregrine-500-1.jpg
 
学校の友達に馴染めないジェイク(エイサ・バターフィールド)は、いつも冒険談を聞かせてくれる祖父エイブ(テレンス・スタンプ)が大好き。だが、ある日、自宅裏の森でエイブ倒れていたのを見つける。「島へ行け」という遺言を聞きながらジェイクは、恐ろしい生き物、バロン(サミュエル・L・ジャクソン)を目にする。エイブが話していた島の児童保護施設に辿りついた時、ある衝撃から第二次世界大戦中の1943年にタイムトリップしたジェイクが出会ったのは、奇妙な子どもたち。彼らの面倒を見ているミス・ペレグリン(エヴァ・グリーン)はジェイクに、子どもたちをある敵から守るため、同じ一日を繰り返すループを作り、平和に暮らしていることを話し、ジェイクを温かく迎え入れる。現実とは違う夢のような日々を過ごしていたジェイクたちだったが、その命を狙うバロン一行がすぐそこまで来ていた…。
 
 
MissPeregrine-500-2.jpg
 
タイムトリップにループと、二重に時間を操作された世界でのみ平和を維持できるのは、皮肉なものだ。夜、爆撃機からナチス印の爆弾が投下されても、ループでまた陽光ふりそそぐ昼間に戻る。アンティークの洋館、その庭には『シザーハンズ』でハサミ男のエドワードがカッティングしたような動物オブジェの植木もあり、ここでもバートン印を見つけてニヤリ。生まれつき特殊な能力を持つ子どもたちが、そこだけは自分たちの居場所として、安心して暮らせる場所なのだ。人目に付かないようにひっそり暮らしていた“奇妙な”子どもたちが、後半はその能力を最大限に発揮し、ジェイクも自分の潜在能力に気付き、島の館から、大きな戦いの場に踏み出していく。敵と戦うということは、自分たちの殻を破ることでもあり、大冒険でもある。奇妙な自分だからできることで、勇ましく戦う子どもたちの戦闘シーンは迫力十分!ガイコツもたっぷり登場する、バートン監督ファンには美味しい見せ場だ。
 

MissPeregrine-pos.jpg

冒頭に、多くの古い写真がスクリーンに映し出される。実際に原作者のランサム・デムズ氏は古い写真を収集するのが好きだったという。その変わった写真の人物から、その人物の物語を考え、本作の構想が浮かんできたのだとか。そんな創造の源となった写真たち、物語の鍵を握るかもしれない写真たちもお見逃しなく。そして、奇妙でかわいい子どもたちの魅力に、酔いしれよう。
(江口由美)
 
(C) 2016 Twentieth Century Fox

カテゴリ

月別 アーカイブ