制作年・国 | 2017年 日本 |
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上映時間 | 2時間7分 |
監督 | 脚本・監督:荻上直子(『かもめ食堂』『めがね』) |
出演 | 生田斗真、桐谷健太、柿原りんか、ミムラ、田中美佐子、りりィ、門脇 麦 |
公開日、上映劇場 | 2017年2月25日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 他全国ロードショー! |
理解されない辛さや怒りを編み物に込めて――
生田斗真の内面からの美しさに心奪われる至福の一篇
“ふんどし一丁”の大胆露出で大暴れする『土竜の唄』シリーズの記憶が新しい生田斗真が、今度は心身共に美しいトランスジェンダーを演じて魅了する。中学生の時にカミングアウトした心身共に女性として生きるセクシャル・マイノリティ(LGBT)のリンコが主人公。彼女の心の美しさに惹かれすべてを受け入れる恋人を桐谷健太が演じ、さらに『かもめ食堂』『めがね』で癒し系映画の火付け役となった荻上直子が監督とくれば、これは絶対見逃せない!!!
荻上直子監督にとって、豊かな食事と穏やかな時の流れの中で身も心も癒してきたこれまでのより、現代を生きる人間そのものに一歩も二歩も踏み込んだ作品といえる。あらゆる差別や偏見に耐えながらも健気に生きるリンコを通して、多様な価値観が求められる現代社会の厳しさを感じさせる。そして、複雑な人間関係に傷つきながらも、寛容で優しい気持ちがもたらすしなやかさを穏やかな映像に編み込んだ、笑って泣ける感動作である。
トモ(柿原りんか)は、ネグレクト状態の母親(ミムラ)とアパートで二人暮らし。母親が男と駆け落ちしてしまったので、いつものように叔父のマキオ(桐谷健太)の元へ転がり込む。ところが、マキオには「今一番大切に想っている人がいる」と言ってリンコ(生田斗真)を紹介する。リンコが普通の女の人ではないと感じたトモだったが、綺麗に整頓された室内や美味しい手料理に目を見張る。また、翌日作ってくれたお弁当がこれまた「食べるのが勿体ない」ほどの可愛いキャラ弁。
そんなトモをいじらしく想い母親のように包み込むリンコ。トモも、トランスジェンダーのリンコに戸惑いながらも母性あふれる優しさに癒され、3人は幸せな日々を過ごしていく。一方学校では、クラスでイジメられっ子のカイ(込江海翔)になぜかトモは付きまとわれていた。“男の子に惹かれる”というカイもまた本当の自分を隠しながら苦悩していた。老人施設で介護の仕事をしているリンコは編み物が大好きで、いつも何か変な形のものを編んでいる。その編み物の意味を知るにつれ、リンコがそれまで生きて来た過去や周辺の人々の事情が明らかになっていく……。
セクシャル・マイノリティへの偏見によってリンコがいかに傷付いてきたか――その怒りや悲しみを編み物をすることで静めるという。それはLGBTであろうと、ネグレクトの家庭環境に生まれようと、どんな宿命を背負おうが、自分のすべて受け入れることによって強くなれることを教えてくれる。
次第にトモを我が子のように慈しむリンコの姿がいい。そんな二人を見守るマキオの優しさがいい。育児放棄していた母親がトモを迎えにきた時のリンコの対応がいい。トモにとって、リンコとマキオとの3人の幸せな日々も捨てがたいが、どんなひどい親でも実の母親ほどいいものはない。子供も親に面倒みてもらうだけの受け身の生き方ではなく、自ら親を励ますように率先して生きていく強さが必要なのだ――と、勇気付けられるようだった。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://kareamu.com/
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