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『ぼくと駄菓子のいえ』

 
       

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作品データ
制作年・国 2015年 日本 
上映時間 1時間14分
監督 監督・撮影・編集:田中健太  制作指導:原 一男、小林佐知子
出演 松本明美、松本よしえ
公開日、上映劇場 2017年2月4日(土)~シネ・ヌーヴォにて公開

 

~さみしい子供たちの心を癒す小さな駄菓子屋さん~

 

昔は何かあったら本気で叱って助けてくれるオッチャンやおばちゃんがよくいたものだ。それがコンビニや自販機で会話せずに買い物ができるようになってからというもの、誰もが無関心で孤独は深まるばかり。そんな現代において、大阪は富田林市にある駄菓子屋「風和里(ふわり)」では、おばちゃんたちが子供たちの成長を見守り励ましてくれている。親以上に親身になって、子供たちの声に耳を傾け、子供たちの変化に関心を寄せ、困った時には助けもするが、欠点を指摘し本気で叱ってもくれる。なんとありがたいことだろう。


bokudagashi-500-1.jpg田中健太監督は、大阪芸術大学1回生の時、原一男監督の指導のもとで「魅力的なおばあちゃん」をレポートする課題のため、近所の駄菓子屋「風和里(ふわり)」を撮り始める。いつも明るく笑顔で迎えてくれる松本明美さんが経営するお店は学校帰りの子供たちで賑わっている。みんなに「学校中退したら後悔するで」と諭し、時にはバイトの世話まですることもある。だが、「家でおやつ食べられる子はここへは来ません」と語るのは、可愛い絵と綺麗な文字で四季折々の励ましの黒板を掲げる娘のよしえさん。店にやってくる子供たちの中には、親の離婚やネグレクトや学校でのイジメなど、様々な問題を抱えている子供たちが多く、母親の温もりを求め、心の隙間を埋めるようにやってくる。まるでオアシスのような場所だ。


bokudagashi-500-2.jpgそんな駄菓子屋のおばちゃんらと子供たちの情景を、3年に渡って撮影した田中健太監督。毎日のように駄菓子屋に通い、お兄ちゃん的存在になって溶け込み、丁寧な言葉遣いでインタビューしている。監督自身もかつて不登校を経験したこともあり、子供たちの気持ちにすぐに共感できたという。だからこそ、自分の気持ちを上手く表現できない子供たちの素直な声を聴き出せていたのではないか。和やかに語り合う機嫌のいい時ばかりではなく、行き詰った少年の暗い表情や、それを心配するおばちゃんたちの気苦労など、予期せぬサスペンスフルなシーンに惹き込まれてしまう。

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家族とは中々素直に話せないことでも、他人だと話しやすいこともある。おばちゃんたちは甘やかすだけではない。言うべき時には厳しい態度をとる。今どき、そんな本気モードで語りかけてくれる人は少ない。小さな駄菓子屋で繰り広げられる情景は、親身になって話を聴き、愛情を注ぐことの重要性を改めて教えてくれる。本来、家庭で為されるべきことだ。様々な福祉行政でも補えないようなことを、おばちゃんたちは担っている。さみしい子供たちを癒すだけでなく、私たちが忘れてしまった“人と関わり合う勇気と幸せ”をもたらしてくれているようだ。

(河田 真喜子)

 公式サイト⇒ http://www.bokutodagashinoie.com/


【イベント情報】

①トークイベントを開催します!

2/4 (土)松本明美さん(出演)×田中監督
2/6 (月)大森一樹さん(映画監督)×田中監督
2/7 (火)今村克彦さん(共育者)×田中監督
2/9 (木)山本健慈さん(社会福祉法人アトム共同福祉会理事・前和歌山大学長)×一森風和里さん(現役中学生<少年の主張>大阪代表)×田中監督
2/10(金)西林幸三郎さん(児童虐待防止協会執行理事 大阪芸術大学教授)×田中監督


②上映期間中、劇場内で『出張駄菓子・風和里』を開催。

2/4は松本明美さん(出演)が販売いたします。
 ※チラシなどに記載しております、2/4(土)の松本よしえさん(出演)の来場は諸事情により、中止となりました。

是非、この機会にご来場ください!


 

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