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『TOMORROW パーマネントライフを探して』

 
       

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作品データ
原題 DEMAIN
制作年・国 2015年 フランス
上映時間 2時間
監督 シリル・ディオン、メラニー・ロラン
出演 シリル・ディオン、メラニー・ロラン、ロブ・ホプキンス、ヴァンダナ・シヴァ、ヤン・ゲール他
公開日、上映劇場 2017年1月21日(土)~シネ・リーブル梅田、2月11日(土)~シネ・リーブル神戸、2月18日(土)~京都シネマ他全国順次公開
受賞歴 第41回セザール賞ベストドキュメンタリー賞受賞

 

~メラニー・ロランと探訪する、

地球のため、みんなのために今からできるライフスタイルとは~

 
女優だけでなく、映画監督としてもその手腕を発揮しているメラニー・ロラン(『オーケストラ!』『イングロリアス・バスターズ』。私も大好きな女優の一人だが、母としての顔も持つ彼女が、同世代のジャーナリスト、シリル・ディオンらと、子どもたちの未来は明るいと感じられるような新しいライフスタイルを提示するドキュメンタリーを作り上げた。
メラニー・ロラン一行と探訪の旅に出ているかのように、彼らの旅や、街の様子を合間で映し出す。使われている音楽もロックをはじめ、とてもセンスが良く、観ていて心地よい。しかも、農業やエネルギー、マネーから民主主義、教育にいたるまで、世界で成果を挙げつつある、最新の「地球に優しく、人に優しい」取り組みを体感できるのだ。
 
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何かに偏るのではなく、探求するからこそつながってくる循環を大事にする構成は、最後に「教育」を据えている。そこで紹介されているのは、7歳から16歳まで教科書や食堂、健康相談が無料というフィンランドの教育現場。個人を信用し、テストより教えることに時間を使う教育は、このドキュメンタリーでの取り組みの未来の担い手となる子どもたちにとって、真に豊かな教育とは何かを示している。
 
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エネルギーでは、オイルショックから40年かけて脱化石燃料を実現したレイキャビック(アイスランド)の取り組みや、2025年までに二酸化炭素排出量ゼロを目標に、風力発電機の建設、自転車専用道路や歩行者レーンを作ったコペンハーゲン(デンマーク)などの取り組みを紹介。また、地域通貨で地産地消を推進し、地元を活性化させているトットネスやブリストル(イギリス)でもインタビューを敢行。デヴィッド・ボーイのお札で買い物できるなんて、そりゃ、クールだな!また革命的な民主主義の村、コタムバカム(インド)の村長を取り上げるだけでなく、民主主義を覆すために「くじ引き制復活」を説く論者の意見も拾っている。
 
 
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私が一番身近に感じたテーマは、やはり「農業」だ。かつては自動車の街だったデトロイト(アメリカ)が今近郊農業で世界から注目を浴びる場所になっていることに驚いた。また、マンチェスター近郊の小さな町、トッドモーデン(イギリス)では、町中の花壇や公共の土地に野菜やハーブを植えて共有する取り組みを紹介。ただ作物が採れるだけでなく、町の人たちや警察官まで、植えられた作物のことが共通の話題となり、コミュニティ内で良好なコミュニケーションが築けているという。なんと豊かな地域なんだ!ル・ベック・エルアン(フランス)の自然のままをモデルにした農場の徹底ぶりも衝撃的。農薬はもちろんのこと、機械も動力も石油も使用しない。一番興味深いのは食物の多様性を守っていること。効率重視の単一栽培ではなく、有史以来そうであった自然な方法に立ち返って今やCO2の削減にも寄与している。誰もが真似できることではないが、農業のあり方、しいては「ちょっと地元の農園でも借りてみようかな」と農業自体に興味を持てたのは、本作が胸の奥底に眠っていた私の問題意識を刺激してくれたからだろう。
 
 
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最後に映し出される言葉は、“We have to get moving now!”
みんなが少しずつ動くことで、地球に優しく、人に優しい社会ができる。ネイチャー誌の論文によると、「今のライフスタイルを続ければ、人類は滅亡する」(2012年発表)そうだが、打ちひしがれている場合ではない。未来に向けてできることはきっとあると思える一本。世界の多彩な取り組みを、ぜひ学んでみよう。
(江口由美)
 
公式サイト⇒:http://www.cetera.co.jp/tomorrow/
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