原題 | Suffragette |
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制作年・国 | 20115年 イギリス |
上映時間 | 1時間46分 |
監督 | サラ・ガヴロン |
出演 | キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、ベン・ウィショー、メリル・ストリープ、ブレンダン・グリーソン、アンヌ=マリー・ダフ |
公開日、上映劇場 | 2017年1月27日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、MOVIX八尾、T・ジョイ京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー |
生まれ来る少女たちのために命を賭して闘った女たちのドラマ
1912年のイギリスが舞台。女性には投票権も親権も与えられていなかった。モードは、洗濯工場で働きながら、一人息子を育て、夫も同じ工場で働く24歳。7歳の時からパートで洗濯工場で働き、母も洗濯女であり、身体をこわして若くして亡くなっていた。当時、洗濯工場で働く女性の賃金は、男性の半分から6分の1。暑くてけがの多い過酷な労働環境で、男性よりさらに長く働かされていた。そんなモードが、女性参政権運動に参加する同僚に誘われ、集会に出て、法改正を訴える公聴会で証言の場に立ったとき、「もしかして…他の生き方があるのではないか」という思いをふと口にし、自分の置かれている状況に疑問を持つようになる。
映画は、モードという一人の母親、平凡な女性が、参政権運動に出会い、子どもや夫への愛情との間で揺れ動き、迷いながらも、自らの信じるまま、仲間達とともに大胆に行動していく姿を描く。キャリー・マリガンが、ひそやかな決意のもと、成長し、変わっていくモードを繊細に演じ、魅了する。観客は、モードをとおして、参政権を獲得するための女性たちのドラマチックなドラマをリアルに追体験することになる。
原題の『サフラジェット』とは、女性参政権論者の中でも過激な活動家を意味する。法改正の要望を無視し続ける議会や、デモに対する警官らの暴力的な弾圧に耐えかねた女性達は、「言葉より行動を」とのスローガンのもと、大衆の関心を集めようと、郵便ポストへの放火や電話線の切断など、運動を先鋭化させていく。過激な手法をとりながらも「人を傷つけない」よう心を配り、投獄されても孤高にハンガーストライキを続け、権力に屈しない姿は、警察側の男性警部の心をも動かすようになる。メリル・ストリープ演じる実在の人物で、階級を超えて、運動のリーダーであったエメリン・パンクハーストの演説「将来生まれる少女たちが、兄や弟と同じ機会を持てる時代のために闘う」という、自分達の“今”を変えるためだけでなく、未来の女性達にも思いをめぐらせた活動信念が心を打つ。
映画をとおして、観客は、知らなかった歴史を知る。一定の年齢になれば、当たり前のものとして与えられる選挙権が、実は、多くの名もない女性達の不屈の意思と権力との闘いの果てに獲得された権利であることを教えられ、深い感動を新たにする。女性だけでなく、一人でも多くの男性に観てほしい力作だ。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://mirai-hanataba.com/
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