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『マリアンヌ』

 
       

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作品データ
原題 Allied
制作年・国 2016年 アメリカ・イギリス 
上映時間 2時間04分
監督 監督:ロバート・ゼメキス  脚本:スティーヴン・ナイト
出演 ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、ジャレッド・ハリス、サイモン・マクバーニー、リジー・キャプラン
公開日、上映劇場 2017年2月10日(金)~全国ロードショー

 

偽りの夫婦を演じた男女の悲恋を壮大なスケールで。
洗練された究極の大人のラブ・ストーリー。


1942年、モロッコ。空が白み始めたサハラ砂漠に、パラシュートでひとり降り立った男マックス(ブラッド・ピット)。見渡す限り荒涼とした砂漠の大地は、命知らずの男の不毛な人生を物語るようでやるせなく、胸がざわめくものを感じた。イギリスの特殊作戦執行部から送り込まれたカナダ人のマックスは、ヒトラーのナチスに打撃を与える極秘任務を負ってカサブランカに赴く。そこで、伝説のフランス軍レジスタンスの女性と偽装夫婦を演じ、作戦に挑む計画だ。こうして美貌の妻マリアンヌ(マリオン・コティヤール)と“初めて出会う”…。


Marianne-500-1.jpg誰かを愛する人並みの幸せなど望みもしなかったマックスは、彼に向って愛に満ちた微笑を浮かべるマリアンヌの瞳に、内心たじろぐ。百戦錬磨、危険な任務をくぐり抜けてきた男が必死に動揺を見破られまいとする一瞬、まじりあう視線に息をのむ。観ているこちらの心も射抜くほどにロマンチックなのだ。ロバート・ゼメキス監督が、任務のために偽りの夫婦を演じる男女が互いに惹かれあう“永遠の一瞬”を、美しくエモーショナルに印象づけている訳は、2人にとって職務上、許されない恋情だからという以外にも含みがあった。それが分かるのは終盤、予期せぬ真実が明らかになってから。そんなマックスを相手に、人目を欺くためと貞淑な妻の夜顔をのぞかせて翻弄するマリアンヌは、やはりある意味でファム・ファタールなのだった。


Marianne-500-3.jpg捨て身でドイツ大使暗殺計画に挑むマックスとマリアンヌは、その前日、過酷な時代に生きる意味を確かめあうようにして、激情の愛に身をゆだねる。最初で最後と思うその刹那、皮肉にも偽らざる愛の姿を晒して…。砂漠に停めた車中で、明日死んでしまうかもしれない命の炎を燃やし、互いの温もりで満たされる2人。ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールのラブ・シーンは、目もくらむほど官能的で美しく、いっそう切なさが深まるラグジュアリーなシーンに仕上がっている。


Marianne-500-2.jpgからくも任務に成功したマックスは、正式にマリアンヌを妻に迎える。ロンドン郊外で、愛らしい娘を幸福な日々を過ごしていたが、ある日“マリアンヌの秘密”がもたらされ、マックスに非情の任務がくだる…。VFXの魔術師ともいうべきロバート・ゼメキス監督は、1940年代の空気感をリアルに現出することに腐心した。衣装、美術はもちろんのこと、舞台セットとVFXを巧みに融合させ、観る者にタイムスリップしたような錯覚を引き起こさせるほどだ。そんな映像世界で、マリオン・コティヤールの美しさはいちだんと際立っていた。愛を知らない男の心を虜にするにしても、余りあるくらいに。


戦時下のスパイ・アクションと、運命の恋に思いがけない罰を与えられた男女の愛のミステリーがサスペンスフルに絡みあう、上質の大人のラブ・ストーリーだ。


(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ http://marianne-movie.jp/

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