原題 | THE ACCOUNTANT |
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制作年・国 | 2016年 アメリカ |
上映時間 | 2時間08分 |
監督 | ギャビン・オコナー |
出演 | ベン・アフレック アナ・ケンドリック J・K・シモンズ ジョン・バーンサル ジェフリー・タンバ― ジョン・リスゴー |
公開日、上映劇場 | 2017年1月21日(土)~丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマ、梅田ブルク7、なんばパークスシネマ、T・ジョイ京都、MOVIX京都、神戸国際松竹、OSシネマズミント神戸 他全国ロードショー |
主人公ばかりか、登場人物全員に“別の顔”が…。
練り上げた脚本が光るサスペンス・アクション。
監督第3弾作『アルゴ』でアカデミー賞作品賞を獲得するなど、多才ぶりでも知られるベン・アフレック。今年5月の最新監督作『夜に生きる』に先駆け公開される主演作が、高機能自閉症スペクトラムの会計士クリスチャン・ウルフに扮した『ザ・コンサルタント』。他人とコミュニケーションを図ることに問題を抱える一方、天才的な頭脳に恵まれた彼は、一見、真面目でさえない風貌だし口下手(なので、もうひとつの仕事には好都合なんだけど)。で、ジョークを飛ばしたとしても、ウケない。まるでキャリアの浅い新人芸人が、M-1でキンチョーのあまりすべりまくるようなもの。そんな主人公の個性を、表情筋ひとつ動かさずに演じているベン・アフレックのアップは、実に見ものだった(ウケるだろうと狙ったジョークがスベった時の表情が、ある意味痛痒い。笑)。感情表現のうまくないウルフが、仕事を通じて出会った女性デイナ(アナ・ケンドリック)に徐々に心開いていく過程に応じて、表情にわずかな変化をつけているのだが、これがわかりにくい(笑)ので、十分注視されることをお勧めしたい(というのは、ちょっとしたジョークのつもりなんですが)。注視していなければ巧妙に張り巡らされた伏線を見落としてしまう可能性大。これはマジです。
たとえば、2人を鮮やかな手腕で刺殺した男の姿を追う別の男が、とあるビルの一室で息を詰めて様子をうかがう。誰が誰を、何の目的で始末?しようとしているのか、謎めいたこのプロローグは後半で明かされる伏線のひとつ。なのだが、正体不明の影だけで結ばれるこのシークエンスは、さながらエドワード・ホッパーの絵画を思わせる陰影(真っ暗な刑務所の房のシーンも同様)だと感じたのはあながちでもなさそう。報酬にルノワールや、ポロックの名画を要求することもあるウルフの仕事は、しがない会計士と…。
小さな田舎町で、ひっそりと暮らす孤独な男ウルフ。彼には、凄腕の殺し屋の顔があり、犯罪社会で一目置かれる存在だが、パソコンと電話でバックアップしてくれる謎の相棒以外、決してその正体を知る者はいない。ところが、ある大手電子機器メーカーの依頼で財務調査に着手し、動かしがたい不正を暴いたことから、思いもよらぬ陰謀に巻き込まれてしまう。自らを危険に晒して、経理担当デイナの命を守ろうとするウルフは、犯罪組織や財務省犯罪操作部レイモンド・キング(J・K・シモンズ)からも追いつめられ、いよいよ攻勢に転じた時、予期しない運命の皮肉に見舞われる。
あまりによくできたストーリーのため、このサスペンス小説の原作を読みたいものだと思ったが、『ジャッジ 裁かれる判事』で脚光を浴びたビル・ドゥビュークのオリジナル脚本だった。真相へと至る謎解きのプロセスの面白さに加え、魅力的なサブ・エピソードや何より人物描写が素晴らしい。会計士にして殺し屋というユニークな主人公の身辺には、過去のある者、秘密を抱える者もいて、ちょっと視点をずらせば群像ドラマの魅力も味わえる。それにしても、インドネシアの格闘技“プンチャック・シラット”をマスターしたベン・アフレックこと会計士ウルフVS傭兵軍団の死闘、銃撃戦は文字通り圧巻だった。
(映画ライター:柳 博子)
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