映画レビュー最新注目映画レビューを、いち早くお届けします。

『ヒトラーの忘れもの』

 
       

hitlerno-550.jpg

       
作品データ
原題 LAND OF MINE  
制作年・国 2015年 デンマーク・ドイツ 
上映時間 1時間41分
原作 ヘリェ・ヘーイマン(「強制の下で」本邦未訳)
監督 脚本・監督:マーチン・サントフリート  撮影:カミラ・イェルム・クヌスン
出演 ローラン・ムラ、ミゲル・ボー・フルスゴー、ルイス・ホフマン、ジョエル・バズマン、エーミール・ベルトン、オスカー・ベルトンほか
公開日、上映劇場 2016年12月31日(土)~テアトル梅田、1月21日(土)~シネ・リーブル神戸、順次~京都シネマ 他全国順次公開

 

デンマークの美しい浜辺に残る戦争の傷痕とは――
今明らかになる、ナチス・ドイツ軍に置き去りにされた少年兵たちの戦後

 

第二次世界大戦中のナチス・ドイツによる甚大な被害についてはよく知られている。だが、開戦翌年の1940年4月から(ロニ・エズラ監督の『エイプリル・ソルジャーズ』(2015)を参照)5年間ドイツに占領されたデンマークの海岸線に150万個に及ぶ地雷が埋設され、戦後その除去作業にドイツ人の少年兵たちが強制的に従事させられていたとは――。ナチス・ドイツは、大戦末期になると兵員補充のため十代半ばの少年まで徴兵していたが、戦後彼らの兵籍を外し敵国に置き去りにした。そのせいで少年兵たちは捕虜扱いされず、デンマークの戦後処理に強制的に充てられることになるのだ。中でも地雷除去に従事した2600人は、その半数しか無事に帰国できなかったという。


hitlerno-500-3.jpg本作は、デンマークでもあまり知られていない史実を基に、死と隣り合わせの過酷な状況下で生まれた少年たちと彼等を指揮するデンマーク人の鬼軍曹との友情を描いた感動作である。戦争が終わっても家族の元に帰れなかった少年たちは、敵国に置き去りにされた上に、大人たちがひき起こした戦争の後始末をさせられる。そのせいで、多くの未来ある少年たちが犠牲になったのだ。


hitlerno-500-4.jpg祖国デンマークの開放をイギリス軍と共に勝ちとったカール軍曹(ローラン・ムラ)は、ナチス・ドイツへの憎しみを露わにして帰還兵を見送っていた。そして、デンマークの海岸に埋設された地雷除去のため、ドイツ人の少年たちを指揮することになる。まだ幼さの残る少年たちに最初は驚くが、憎しみのあまり人格を否定するような暴言暴力を振るっていた。だが、少年たちは地雷に関する専門知識もなければ訓練も受けておらず、いつ爆死するかわからない危険極まりない状況に強制的に置かれていたのだ。しかも、粗末な小屋に押し込まれ、飢えと病気に苛まれながらの日々。


hitlerno-500-1.jpg中でも、セバスチャン(ルイス・ホフマン)と双子の兄弟と深く関わるようになり、帰郷を切望する少年たちの未来の夢などを耳にするにつれ、いつしか指揮官の立場を超えて父子のような絆が芽生えるようになっていた。ある日、ナチス・ドイツへの憎しみのはけ口のように暴力を振るわれた様子を見て、これ以上彼らに犠牲を強いるのは酷だと感じるようになる。ようやく予定の作業が終了して帰国できると喜んだのも束の間……。


hitlerno-shu-500-1.jpg本作は、昨年の《東京国際映画祭2015》で『地雷と少年兵』というタイトルで上映された際、マーチン・サントフリート監督と主演のローラン・ムラ氏(主演男優賞受賞)とプロデューサーのミケール・クレスチャン・リークス氏がトークショーを行った。初主演作となったローラン・ムラ氏は、「ドイツ人の若い俳優たちと、実際地雷原だった海岸でロケを行い、真の人間としてこの作品に関われて幸せだった」と作品を振り返った。監督は、「戦争の悲惨さをサスペンスタッチで描くだけではなく、人道的観点から恐怖や希望、夢、友情、そして生への渇望のパワーを体感してもらいたい」と語った。


hitlerno-500-2.jpg監督の妻でもあるカミラ・イェルム・クヌスン撮影監督による美しい映像は、過酷な状況下でも輝きを失わない少年たちの生命力がカール軍曹の中の憎しみを変化させる要因になったことを証明してみせている。だからこそ、ラストのカール軍曹の行動に、“未来への希望”という光を感じ、心つき動かされるのだろう。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://www.hitler-wasuremono.jp

(C)2015 NORDISK FILM PRODUCTION A/S & AMUSEMENT PARK FILM GMBH & ZDF