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『ラ・ラ・ランド』

 
       

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作品データ
原題 La La Land 
制作年・国 2016年 アメリカ 
上映時間 2時間08分
監督 監督・脚本:デイミアン・チャゼル(『セッション』) 撮影:リヌス・サンドグレン  作曲:ジャスティン・ハーウィッツ  振付:マンディ・ムーア
出演 ライアン・ゴズリング(『ラースと、その彼女』『ドライヴ』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』)、エマ・ストーン(『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『マジック・イン・ムーライト』)
公開日、上映劇場 2017年2月24日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、OSシネマズミント神戸 ほか全国ロードショー

 

熱く夢を語る彼の瞳の輝きが、彼女の人生を照らす光だった。
甘く切ない至極のミュージカル・ラブストーリー。

 

カーステレオからさまざまな音楽が溢れだす大渋滞のL.A.のハイウェイ。車を降りた女性ドライバーが歌う「アナザー・デイ・オブ・サン」を合図に、フラッシュモブさながらにミュージカル・シーンが繰り広げられる。ワンショットで撮られたこの幕開けに心が躍る!座席から数センチ浮き上がるような夢見心地に浸り、携帯電話に気を取られているミアの車を煽るコンバーチブル男セブのクラクション(クラクションのネタが後々、効いてきますよ)で地上(・・)()引き戻される(・・・・・・)。セロニアス・モンクの「ジャパニーズ・フォーク・ソング」(「荒城の月」のカヴァー曲)を聴くセブへのアンサー(・・・・)に中指を立てるミアは、ジャズが嫌いなはずだった。こんなありふれた日常の、見慣れた光景から始まる恋の行方は…。


LALALAND-500-1.jpg前作『セッション』で、音楽の道を目指す若者の青春をサスペンスフルに描き、世界中の映画ファンの度肝を抜いたデイミアン・チャゼル監督が、再び音楽を重要な役どころとしテイストは真逆の“名盤”「ラ・ラ・ランド」(原題「LA LA LAND」のLA=ロサンゼルス。転じて夢の国)を誕生させた。主演には、ブロードウェイ・ミュージカル『キャバレー』で好評を得た、『アメージング・スパイダーマン』のエマ・ストーン。そして、日本でも熱狂的なファンを持つイケメン俳優ライアン・ゴズリングは、歌と踊りはもちろん、ピアノ演奏にも挑んでいる。キャラクターの心情に寄り添った歌詞、音楽の魔法と映画愛でロマンチックに色めく35ミリのシネスコ“総天然色”ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』は、『セッション』の9分19秒を上回るエクセレントなラストが切なすぎる“至極の名盤”。
 

LALALAND-500-2.jpg女優を夢見るミアは、映画スタジオのカフェ(ワーナー・ブラザースに実在する)のバリスタで、オーディションに連戦連敗中。そんな彼女が、女友だち(『エクス・マキナ』ソノヤ・ミズノも出演)とのパーティーからの帰り道、ピアノのメロディーに誘われてとあるバーへ。そこで演奏していたのは、あのコンバーチブル男セブ。しかも再会のタイミングは最悪で彼は、店のオーナー(J・K・シモンズ)にクビを言い渡されたばかり。恋の予感にはほど遠く、気まずさを募らせる2人がいよいよ距離を近づけるシーンが面白い。古き良きジャズを愛する頑固なセブが、消防士風の衣装でシンセ・ポップ「テイク・オン・ミー」を演奏しているのをミアに見られてしまう。ばつが悪いセブは顔から火がでそう…だから、消防士ルックなわけ?笑。


LALALAND-500-3.jpg「ア・ラブリー・ナイト」に乗せて、夜のL.A.を見下ろす6分間ワンカットのタップ・シーンでは、ミアがバッグから取り出したシューズに履きかえる“ミュージカル珍百景”がなにげに映しだされる。かと思えば、デートのダブル・ブッキングをしたミアが、交際相手との食事中に耳にしたBGMがセブのピアノ曲に聴こえ、たまらず店を飛びだす。彼のもとへと急ぐくだりで、名画座でセブが観ている『理由なき反抗』のBGMにシフト・チェンジする。音楽演出、編集のセンスも心憎い。そして真っ暗な劇場で、初めてキスを交わそうとするとフィルムが燃えだし、もどかしい恋心に引火(!!)。グリフィス天文台(『理由なき反抗』の舞台)でワルツを踊る2人が、星々のきらめきを浴び心舞い踊らせて銀河のランデブー。最高にロマンチックなこのシーンは、映画史に残る“ベスト・オブ・ザ・ベスト”。


LALALAND-500-4.jpg彼女への愛ゆえに、旧知のキース(ジョン・レジェンド)のバンドに加入したセブ。一方、女優の夢に挫折したミアはすべてを投げ出そうとするが…。思い描いた夢の途中で、運命の恋に落ちた男女の葛藤と成長のドラマを、『ニューヨーク・ニューヨーク』『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人』『バンドワゴン』などにオマージュを込めて描いたチャゼル監督。これが自身のオリジナル脚本とは、まったく驚く才能の持ち主だ。


(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/lalaland/

© 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate.

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