原題 | Meru |
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制作年・国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 1時間31分 |
監督 | 監督:ジミー・チン、エリザベス・チャイ・バサヒリィ 撮影:レナン・オズターク、ジミー・チン |
出演 | コンラッド・アンカー、ジミー・チン、レナン・オズターク、ジョン・クラカワー、ジェニー・ロウ・アンカー |
公開日、上映劇場 | 2016年12月31日(土)~大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、109シネマズHAT神戸 1月14日(土)~MOVIX堺 |
受賞歴 | サンダンス映画祭観客賞 |
あらゆる危険と困難を乗り越え、
挑戦し続ける登山家の生き様に迫るヒューマン・ドキュメンタリー
極限状況に置かれたとき、人が何をどう考え、どのように行動を選択するか。登山ほど過酷なものはない。頂上を制覇したいという目標と、登頂までの何か月もの準備期間、そこまで登ってくるのに要した労力、登り続けることで命を危険にさらすリスクとを天秤にかけ、気象条件、岩肌の状況、自分と仲間の精神的・肉体的状況、すべてを冷静に分析し判断し、登り続けるか撤退するか決断していく…。
「世界一の壁」と呼ばれる難攻不落のビッグ・ウォール・クライミングに挑戦したのは、コンラッド、ジミー、レナンの3人。ヒマラヤの高峰メルー(約6,600m)の「シャークスフィン」と呼ばれる岩壁をダイレクトに登って頂上に至るルート。これまで何十人もの一流アルピニストが挑戦し、挫折した前人未到のコース。食料、登攀具をはじめ100キロ近いすべての荷物を3人だけで担ぎ上げ、何十メートルも続く岩壁と氷壁を登っていく。1回目の登頂は、出発して早々、吹雪のため何日も停滞することになる…。
撮影したのが、クライマーのレナンとジミーというから驚く。自ら小型カメラを持っての撮影。ほぼ垂直に切り立った絶壁の高さは吸い込まれるように怖く、度肝を抜く迫力。ジミーはナショナル・ジオグラフィック誌の山岳カメラマンとしても活躍しており、美しい映像の数々に息をのむ。雪崩の映像には背筋が凍りついた。この映画が、幾多の難関と危険を乗り越え、よくぞ完成までたどりついたと感慨を覚えるほど。
なぜ山に登るのか…。家族へのインタビュー、他のアルピニストの話も盛り込みながら、3人が、そのとき置かれた状況について語り、次々と降りかかる難題を乗り越えていく強靭なパワーと、山への強い思いを描きこむ。自分一人が登っているわけではない。師の思いを受け継ぎ、仲間の思いを背負って登っている姿に深い感銘を受ける。
氷壁では、先頭をいく者がザイルをつなぐ杭を打ち付る時にできる氷の細かい破片が、後続者の頭上に、雹のように降り落ちる。それを直接受けないよう、深く帽子をかぶるコンラッドの姿が心に焼きついた。若い者に自らの技術と知識を教え、その力量を信じ、先頭を委ねて登っていく。受け継ぎ、受け継がれていくものの重みは、人生のさまざまな面に通じるものがあり、圧巻。
一緒に登る仲間との友情も、常に危険と背中合わせの山では、きれいごとでは済まされない。一人が体調を崩せば、仲間の命を奪うことになる…。諦めず前へと進み続ける3人の生き様は、勇気にあふれ、心を打つ。ぜひ映画館で、桁違いの迫力あふれる映像世界を、大勢の観客とともに味わってほしい。
(伊藤 久美子)
公式サイト⇒ http://meru-movie.jp/
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