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『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

 
       

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作品データ
原題 Florence Foster Jenkins
制作年・国 2016年 イギリス 
上映時間 1時間51分
監督 監督:スティーヴン・フリアーズ(『クィーン』『あなたを抱きしめる日まで』) 脚本:ニコラス・マーティン  撮影:ダニー・コーエン(『英国王のスピーチ』『ルーム』『リリーのすべて』)
出演 メリル・ストリープ(『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』『8月の家族たち』)、ヒュー・グラント(『ノッティングヒルの恋人』『Re:LIFE~リライフ』)、サイモン・ヘルバーグ、レベッカ・ファーガソン、ニナ・アリアンダ
公開日、上映劇場 2016年12月1日(木)~TOHOシネマズ 日劇、TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS)、大阪ステーションシティシネマ ほか全国ロードショー

 

カーネギーホールを満席にした絶世の音痴歌手!?
マダム・フローレンスの純粋さに救われる喜びと感動と

 

世界一音痴のオペラ歌手をメリル・ストリープが、英国貴族出身の夫をヒュー・グラントが演じるなんて、それだけでも観たくなる。しかも、『クィーン』や『あなたを抱きしめる日まで』などベテラン女優が主役の作品を得意とするスティーヴン・フリアーズ監督が、ニューヨークに実在したマダム・フローレンスと彼女を献身的に支えた夫との夫婦愛を鮮やかに甦らせるなんて。さらに、『英国王のスピーチ』や『リリーのすべて』のダニー・コーエン キャメラマンが、ヨーロッパから多くの芸術家が逃れてきた第二次世界大戦中のニューヨークを活写。大富豪のホテル暮らしや滑稽なリサイタルの模様などの豪華さだけなく、音楽への一途な愛を貫くマダム・フローレンスの純粋さにも胸うたれる映画なのだ。


madam.f-500-1.jpgクラシック音楽界の振興を目的とした《ヴェルディ・クラブ》の主催者で大富豪のマダム・フローレンスの「ピアノ伴奏者募集」に集まったピアニストたち。いずれも有能で個性的な演奏を披露する中、穏やかな演奏でマダムの心を射止めたのはコズメ・マクムーン(サイモン・ヘルバーグ)だった。その後彼が目撃するのは、マダム・フローレンスの実態と夫でマネージャーのシンクレア・ベイフィールドとの不思議な夫婦関係だった。実際メリルの方がヒューより11歳上だが、実在のマダム・フローレンスも夫より一回りほど年上だったようだ。


madam.f-500-3.jpgメトロポリタン歌劇場の音楽監督が歌唱レッスンするという、さすがマダム・フローレンス!と思いきや、その歌声を初めて聴いたコズメは我が耳を疑った。なんとマダムは超絶音痴だったのだ!救いがたい酷さ。それでも、誰も指摘しない。自分の歌に陶酔するように気持ち良く歌うに任せていた。高いレッスン料を出してくれるマダムをおだてては、財団からの支援を当てにしていたのだ。そんなマダムでも、一流歌手のように観客を感動させたいと、自分の取り巻きだけを集めてチャリティコンサートを開いていた。夫はその都度マダムを酷評するような音楽評論家や新聞記者をお金で封じていたが、出征した兵士やその家族のためにラジオで歌ったことをきっかけに、その音痴ぶりが広く世間に知れ渡ってしまう。


madam.f-500-2.jpg夫のシンクレアは、イギリスの伯爵の息子だったが庶子のため家督は継げずアメリカにやって来て、父親の莫大な財産を相続したフローレンスと知り合う。最初に結婚した夫に梅毒をうつされ、その症状に苦しんでいたフローレンスを献身的に支え続けた。そんなシンクレアには、妻も認める愛人(レベッカ・ファーガソン)がいた。そして、76歳のフローレンスが、なんと一流ミュージシャンの殿堂・カーネギーホールでコンサートを開催することに……。


今年2月に公開されたフランス映画『偉大なるマルグリット』は、このマダム・フローレンスと夫の物語をベースにしていた。夫の愛を得るために音痴のマルグリットが一生懸命歌う姿がとても健気だった。本作では、自らもミューズとなって人々を感動させたいと願うマダム・フローレンスの音楽への一途な愛が、1年かけてこの役の準備をしたというメリルの熱演と相まって、ひしひしと伝わってくる。また、ヒュー・グラントの徹底した英国紳士ぶりと独特の軽妙さが、奇妙な夫婦関係を実に魅力的に楽しませてくれる。


(河田 真喜子)

公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/florence

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