原題 | The Attorney |
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制作年・国 | 2013年 韓国 |
上映時間 | 2時間7分 |
監督 | ヤン・ウソク |
出演 | ソン・ガンホ、イム・シワン、キム・ヨンエ、クァク・ドウォン、ソン・ヨンチャン、イ・ソンミン、オ・ダルス他 |
公開日、上映劇場 | 2016年11月12日(土)~新宿シネマカリテ、シネ・リーブル梅田、12月17日(土)~元町映画館、近日~京都シネマ ほか全国順次公開 |
軽~いムードまき散らしの弁護士が一転、国家を相手取る熱血漢に!
この映画の魅力は多々あるけれど、何といってもソン・ガンホの一挙一動から目が離せなくなるという至福感にある。ファンは経験してきたはずだ。彼がどうしようもないダメ男を演じても、その裏に抱え持つ寂しさややりきれなさ、出口の見えない絶望感など丸ごとひっくるめて、なぜだか不思議なんだけれど、妙にいとおしくなってしまうことを。しかも本作では、途中から無茶苦茶カッコいい男へと変貌を遂げるのだから。
エリートひしめく弁護士の世界で、主人公のソン・ウソク(ソン・ガンホ)は高卒という異色派だが、不動産登記業務に目をつけ、税務弁護士としてビジネスを繁昌させていた。そのまま何もなければ、特に上昇志向もなく、他の弁護士たちに軽んじられようが、脳天気に人生を渡っていくはずの彼だった。ところが、行きつけのクッパ屋の息子ジヌ(イム・シワン)が、ある日突然、公安当局に逮捕されてしまう。ジヌの母親スネ(キム・ヨンエ)から必死に頼まれ、専門外の事件に首を突っ込むことになったウソクだが、それは国家に闘いを挑むという苦労を自らに課することになるのだった…。
映画の背景として、1970年~80年代の軍事政権下の韓国事情がある。多くの学生や若者たちが不当逮捕され、拘束と拷問を強いられ、スパイ容疑をかけられるという事件がたびたび起こっていた。この映画の中でも、ジヌが受けた痛々しい拷問の跡を見て、ウソクが驚愕し、怒りを募らせるシーンがある。当局は隠ぺいしようとし、ウソクはたった一人でジヌの免罪を晴らそうと尽力する。ウソクが熱弁をふるう裁判シーンは見ごたえたっぷりで、観ている方もいつの間にかこぶしに力を入れていることに気づかされる。
青龍映画賞、大鐘賞など韓国で20冠に輝き、大ヒット。「国家の主権は国民にあり、すべての権力は国民に由来する」というウソクの熱い言葉に心を動かされないなんてあるだろうか。あるのだ、この日本という国では…と、最近の政治状況からつい思ってしまう。このように民を監視し、国家にとって都合の悪い人間に対しては罪をでっち上げて拘束する、そのようなことは二度とあってはならないのだ。本当の意味での民主主義とは何か、それを常に頭に置いて、危機意識を持っていなければ…そういう思いに駆られた必見作である。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://www.bengonin.ayapro.ne.jp/
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