原題 | The Man Who Knew Infinity |
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制作年・国 | 2016年 イギリス |
上映時間 | 1時間48分 |
原作 | ロバート・カニーゲル著「夭逝の数学者・ラマヌジャン無限の天才」(工作舎) |
監督 | 監督・脚本:マシュー・ブラウン |
出演 | デヴ・パテル、ジェレミー・アイアンズ、デヴィカ・ビセ、トビー・ジョーンズ、スティーヴン・フライ |
公開日、上映劇場 | 2016年10月22日(土)~テアトル梅田、MOVIX京都、11月12日(土)~神戸交際松竹、他全国順次公開 |
天才を超越したインド人数学者の埋もれた業績と、
イギリス人数学者との友情
インドの数学者・ラマヌジャンをご存じだろうか?1920年に32歳という若さで夭折したラマヌジャンは、数々の未知の公式を残したにもかかわらず、50年もの間その功績は埋もれたままで、その失われた時間は近代宇宙物理学や数学界の進展を遅らせたと言われるほどの人物である。あまりにも画期的過ぎて魔術師とも言われ、時代がまだラマヌジャンの頭脳に追いついていけなかったのだろう。当時彼を理解できる人は殆どいなかったが、イギリスはケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの数学者G・H・ハーディだけが興味を示し、インドからイギリスへと招聘した。天才を超越したラマヌジャンのひらめきに驚嘆しながらも、「証明する義務」を説くハーディ教授。実話に基づいた二人の信頼と友情の感動物語である。
1914年、イギリスの植民地だったインド南部出身のラマヌジャン(デヴ・パテル)は、独学で研究してきた成果を遂に認めてもらえる機会を得て、新婚の妻を置いて渡英。第一次世界大戦の陰が迫る中、招聘したハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)の下での新たな共同研究が始まった。だが、ヒンドゥー教のバラモン出身の彼は、母親から厳格に育てられたせいで、イギリスの生活に中々馴染めなかった。菜食主義は提供される食事が摂れなくし、部屋ではヒンドゥーの神に祈りながら数式に没頭する日々。また、「大学教育も受けていないインド人にこのような画期的な数式が考えられるはずがない」と、ペテン師か魔術師のような奇異な目で見られ、人種差別も受けていた。
ハーディ教授は学問一途の独身者で、ラマヌジャンの驚異的なひらめきを検証しようと躍起になるが、彼が抱える苦悩や変化が目に入らなかった。一つの事に秀でた専門家というのは、とかく他のことに疎くなるものだが、ハーディ教授がラマヌジャンの深刻な状態に気付いた時には既に遅かった。新妻からの便りも途絶えるようになったラマヌジャンは、孤独に耐えきれず、次第に健康を害していった。
ハーディ教授がラマルジャンのために英国王立協会とトリニティ・カレッジのフェローを取得しようと、大勢の協会員を前にスピーチするシーンには圧倒される。数学の専門用語が噴出するかなり難易度の高いセリフを、正に「立て板に水」の如くジェレミー・アイアンズが迫真の演技で魅了する。後に、ハーディ教授自身が、自らの功績について訊かれた時、「ラマヌジャンを見い出したこと」と答え、ラマヌジャンとの共同研究は「人生で最もロマンに溢れる時間」であったと語ったという。二人の丁々発止の議論の様子が目に浮かぶようだ。それ故に、ラマヌジャンをもっと大切にできなかったかと、惜しまれてならない。
(河田 真喜子)
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