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『ダゲレオタイプの女』

 
       

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作品データ
原題 La femme de la plaque argentique  
制作年・国 2016年 フランス=ベルギー=日本
上映時間 2時間11分
監督 監督・脚本:黒沢清
出演 タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー、オリヴィエ・グルメ、マチュー・アマルリック
公開日、上映劇場 2016年10月22日(土)~シネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、10月29日(土)~ 京都シネマ 

 

~「撮る-撮られる」関係の不思議に迫る~

 

生と死、正気と狂気、現実と幻想…さまざまな境界でさまよう人間の姿にスポットを当ててきた黒沢清監督が、オールフランスロケ、外国人キャスト、全編フランス語により、監督自らも脚本に携わってオリジナル脚本による作品を撮りあげた。


dagereo-500-1.jpg舞台は、パリ郊外の古く大きな屋敷。主人公ジャンは、写真家ステファンの助手に採用され、写真のモデルをつとめる、ステファンの娘マリーと出会い、恋に落ちる。折りしも、屋敷の土地を買い取り再開発しようとする業者が現れ、事態は混迷を極めていく…。
 

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dagereo-240-1.jpgダゲレオタイプとは、170年前の世界最古の写真撮影方法。何十分、時には1時間以上もの長い露光を必要とするため、モデルは動かないよう、拘束器具で身体を固定される。銀板に直接焼き付けるため、フィルムと違い、写真は一枚しか残らない。黒沢監督は、かつて日本の写真美術館で、偶然、ダゲレオタイプの女性の肖像を見て、「苦痛とも恍惚ともつかない表情で虚空を見つめていた」のが印象に残り、本作のきっかけになったという。「撮る-撮られる」の関係を長時間強いられることで生まれる、モデルと撮影者との間の不思議な感情の交流。マリーはジャンの愛にこたえながらも、父との絆を断ち切れず、そんなマリーの心情を察し、ジャンは、屋敷からマリーを連れ出そうとするが…。

 


古い屋敷には、マリーの亡き母ドゥーニーズが愛した温室があり、彼女はそこで自ら命を絶ったと知らされ、ジャンの目前にもドゥーニーズの幻影が現れる。現実と幻想が入り混じり、風に揺れるカーテン、人がいないのに閉まる扉と、不思議な気配が屋敷に漂い、クロサワ・ワールドの魅力全開。誰が生きていて、誰が死んでいるのかさえ、しだいにわからなくなっていく。


dagereo-500-3.jpgマリーを演じるコンスタンス・ルソーの透き通るような美しさと繊細な表情は、写真に撮られることで、生気を奪われていく、はかない存在感を醸し出し、ジャンへの愛と父への愛に引き裂かれる悲劇性を秘めた存在として、観るものをひきつけてやまない。ホラーともラブロマンスともとれる本作、あなたの心にはどんなふうに映るだろうか。


(伊藤 久美子)

公式サイト⇒ http://www.bitters.co.jp/dagereo/

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