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『PK』

 
       

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作品データ
原題 REGENTS 
制作年・国 2014年 インド 
上映時間 2時間33分
監督 ラージクマール・ヒラニ (『きっと、うまくいく』)
出演 アーミル・カーン (『きっと、うまくいく』)、アヌシュカ・シャルマ (『命ある限り』)、スシャント・シン・ラージプート、サンジャイ・ダット
公開日、上映劇場 2016年10月29日(土)~大阪ステーションシティシネマ、布施ラインシネマ、京都みなみ会館、11月26日(土)~109シネマズHAT神戸、シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開

 

無知で無邪気な青年PKが、神さま捜しの凸凹旅で恋に落ち…。
風刺のきいた“別品”のボリウッド・エンターテインメント。

 

監督ラージクマール・ヒラニと主演アーミル・カーンが、前作「きっと、うまくいく」で樹立したインド映画歴代記録を、自ら塗り替えたのが本作「PK」。感動、ラブストーリー、SFコメディーに歌と踊りとテンコ盛りのボリウッド・スタイルを、神と宗教といったシリアスなテーマでスパイスをきかせて見事にグレードアップ。全世界興収100億円を突破したグローバルなスケールの「PK」は、インドの荒野で途方に暮れる素っ裸の男(アーミルの鍛え上げた肉体美♡)が、帰郷するために必要な特別の“リモコン”を取り戻すべく、我が道を目指し冒険の旅に出るところから始まる。


PK-500-1.jpg社会の常識やルールとは無縁に生きてきた男は、出会う人々を質問攻めにしたり、瞬きも惜しむ好奇心で世の中のあるがままを見つめ学習する。そんな彼の奇妙な様子をからかい半分に“Pee-kay”(ヒンディー語でほろ酔い、千鳥足の意味)と人々は呼んだ。それが、この地で与えられた彼の名前PKになった。けれど彼の目に映る人々の姿こそ、奇妙なことだらけ。制服姿の警官はやけに態度が大きいし、困った時は天を仰いで“神さま”にお願いをするのだとか。しかも、人それぞれに信じる神さまがいて、どの神さまにお願いをすればいいのかPKにはわからない。かくして、あらゆる宗教の飾りを首からぶら下げ、リモコンを取り戻すために神さま捜しを開始したPKは、TVリポーターの女性ジャグー(「命ある限り」のアヌシュカ・シャルマ)と出会う。彼女は、神さまがつかわした女神か、それとも…。


PK-500-2.jpg留学先で、青年サルファラーズと恋に落ちたジャグーは、宗教の違いから父に交際を禁じられ悲しい別れをした。その傷心を忘れようと仕事に打ち込む彼女は、PKの不思議なパワーに心を癒され笑顔を取り戻していく。そんな時、ある新興宗教の会場でついにリモコンを見つけたPKのために、ジャグーは前代未聞のTV討論会を企画、『PK VS 導師』を実現させる。

 
PK-500-3.jpgPKの特別なリモコンを、神聖な石として祀る導師(「バルフィ!人生に唄えば」のソウラブ・シュクラ)のインチキを暴くクライマックス。ちりばめられた伏線の数々が鮮やかに収束するカタルシスを味わい、さらに思ってもみないロマンチックな恋のエピソードに、切なくも心温まる涙を誘われる。多様な宗教を信仰する人々が、時として対立し悲劇的な事態を引き起こすこともある現実を、“真実の愛の奇跡”といったエンターテインメントの通俗性をもってして批判した点が、この作品を格別の品“別品”たらしめている。


(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ http://pk-movie.jp

(c)RAJKUMAR HIRANI FILMS PRIVATE LIMITED

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