制作年・国 | 2016年 日本 |
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上映時間 | 2時間 PG12 |
原作 | 原作映画:「盗写 1/250秒」(原田眞人監督・脚本) |
監督 | 監督・脚本:大根仁 主題歌:「無情の海に」TOKYO No.1 SOUL SET feat.福山雅治 on guitar (ユニバーサルJ) |
出演 | 福山雅治、二階堂ふみ、吉田 羊、滝藤賢一、リリー・フランキー |
公開日、上映劇場 | 2016年10月1日(土)~全国東宝系にてロードショー |
~人気男・福山雅治の型破りパパラッチ~
日本映画には珍しくシャれたエンターテインメント。昨年、電撃的に結婚発表して多くの女性ファンをがっかりさせた人気シンガー福山雅治がパパラッチに扮して、新米記者・二階堂ふみとのコンビでスクープ連発する“夢の映画”。ちょいとハリウッド風味だ。
福山雅治は「日本一撮られない男」として知られる。長い間注目を集める独身男だったのに、町中を歩いても「気づかれなかった」という。そんな男があろうことか「芸能スキャンダル専門」カメラマン、パパラッチに扮するのだから何とも皮肉。カメラマンとしても定評ある彼ならではのハマり役か。
都城静(福山)は多くの伝説的スクープが残る凄腕カメラマン。だが、ある出来事をきっかけに報道写真への情熱を失い、芸能スキャンダル専門に転向。今では落ちぶれてただの“酔っぱらいパパラッチ”とバカにされ、自堕落な日々を過ごす。挫折して夢破れた“負け犬”が福山にハマるのもずいぶん皮肉だ。
そんな彼にも転機が訪れる。写真週刊誌「SCOOP!」に配属されたばかりの新米女性記者・行川野火(二階堂)の“教育係”を命しられたのだ。仕掛人は都城の元カノ、副編集長・定子(吉田羊)。仕事に情熱をなくした都城と、ヤル気満々のルーキー野火。うまくいく訳がないと思ったら、都城の大胆行動に野火があわてふためきながらついていく。凸凹コンビぶりがおかしい。
ベテラン&ルーキーのコンビは刑事ものでも新聞記者ものでも定番。日本では古くは『砂の器』(74年)の丹波哲郎刑事と新米・森田健作、ハリウッドなら刑事ものでクリント・イーストウッドとチャーリー・シーン『ルーキー』(90年)。新聞記者ではジュリア・ロバーツ&ニック・ノルティの『アイ・ラブ・トラブル』(94年)が思い浮かぶ。経験豊富で落ち着いたベテランと、ドジな新米はドラマ作りにうってつけ。福山&二階堂コンビもフレッシュかつユニークだ。
都城は有名な戦場カメラマン、ロバート・キャパを夢見てカメラマンを志した男。彼がどんな挫折を経験したのか、興味深いが“やる気あふれる野火”に刺激されて忘れていた報道カメラマンの本能に再び目覚めていく…。新旧のコンビワークは、新米がベテランを覚醒させる役割を担うのも定番だ。
シンガーとして「チケットが取れない」ほどの人気者・福山は、俳優としても東野圭吾原作『容疑者Xの献身』(08年)など“ガリレオ”シリーズで大人気。一方、是枝裕和監督の問題作『そして父になる』(13年)も好評で各種作品賞に選ばれ、演技力も高く評価される。「一人で三つも四つも」才能に恵まれたうらやましい男だ。
1960年代に映画「若大将シリーズ」で人気を博し、ヒット曲を自作自演で連発したあの加山雄三を彷彿させるスーパースターだろう。その後、日本映画は撮影所システムが崩壊し、同時に「各社専属」のスターシステムもなくなった。それが映画衰退の原因とは言えないが、オールドファンは寂しさを禁じ得ない。福山雅治ひとりで現状を変えるのは無理だが、プロ野球の“トリプルスリー”のような起爆剤の役割を期待したい。
映画『SCOOP!』の元になったのは1985年の伝説映画『盗写1/250秒』(原田真人監督)。当時、高校生だった大根仁監督はそのシャープな映像の虜になり、8本もVHSコレクションしたという。川北プロデューサーから「福山雅治主演の企画」を求められて『盗写~』を提出したら見事にはまった。『盗写』で故原田芳雄が演じたアウトローなカメラマン、オリジナルでは宇崎竜童が演じた軽妙な相棒もミックスした新たな都城静。硬軟二人のキャラを一人で演じられるのも福山の独壇場だった。
どんな形であろうと、メディアを志す者には燃える野望がある。中でも戦場カメラマンの道はとりわけ過酷だろう。スペイン戦争をはじめ、日中戦争、第二次大戦など5つの戦争で“写真報道”してきた歴史的カメラマン、ロバート・キャパの道は至難というしかない。都城カメラマンの“人生リターン・マッチ”は尋常ならざる道をたどるのも当然か。
(安永 五郎)
公式サイト⇒ http://scoop-movie.jp/
(C)2016映画「SCOOP!」製作委員会