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『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』

 
       

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作品データ
原題 GENIUS
制作年・国 2015年 イギリス 
上映時間 1時間44分
原作 原題:A・スコットバーグ 「名編集者パーキンズ」(草思社刊)
監督 監督:マイケル・グランデ―ジ(初監督)  脚本:ジョン・ローガン『グラディエーター』『007スカイフォール』
出演 コリン・ファース『英国王のスピーチ』『キングスマン』、ジュード・ロウ『シャーロック・ホームズ』シリーズ、ニコール・キッドマン、ガイ・ピアース、ローラ・リニー、ドミニク・ウェストほか
公開日、上映劇場 2016年10月14日(金)~大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズなんば、 TOHOシネマズ西宮OS、TOHOシネマズ二条にて公開

 

後にビート・ジェネレーション作家にも影響を与えたトマス・ウルフと

名うての編集者パーキンズの、父と息子の絆にも似た友愛。

 

雨のニューヨーク。傘も差さずに舗道にたたずむ男トマス・ウルフ。苦渋の色をにじませ、名出版社スクリブナーズ社のビルを見やる。その一室で、彼の作家人生は始まった…。

スコット・F・フィッツジェラルド、アーネスト・ヘミングウェイを発掘したスクリブナーズ社の編集者マックス・パーキンズのもとに、アメリカ南部出身の無名の若者トマス・ウルフの原稿が持ち込まれる。読み始めてすぐ、ただならぬものを感じたパーキンズは、誰にも認められず悲観的になっていたトマスに出版を請け合う…。20世紀初期のアメリカを代表する偉大な作家トマス・ウルフ誕生秘話と濃密な約9年の作家人生を、アメリカ文学界きっての名編集者パーキンズの視点で描いた伝記映画。


bestsellar-500-3.jpg“傑作”を世に送りだすことが編集者の務めと辣腕を振るう。と言っても、紳士然とした生粋のニューヨーカーであるパーキンズ。静かなカリスマ性を、「英国王のスピーチ」でオスカーを獲得したイギリスの名優コリン・ファースが、独特のエレガンスを醸す好演ではまり役。一方、実年齢よりも10歳以上も年下のトマス役に挑んだのは「シャーロック・ホームズ」シリーズのジュード・ロウ。書くことで、内なる魔物を手なづけるしかできない不器用な、あるいは無防備な子供といった天才作家の鮮烈な生き方を演じ切っていて、ファースとの絶妙のコンビネーションはまったく見ものだった。


bestsellar-500-1.jpg家族との時間を犠牲にするほどのめり込み、トマスの膨大な原稿のうち300ページ分を削除する共同作業に取りかかるパーキンズ。トマスのために家庭を捨てた年上の愛人アリーンは、そんなパーキンズへの嫉妬心で気も狂わんばかりに憔悴していく。周囲の人間を巻き込みつつ完成したトマスの処女作「天使よ故郷を見よ」は世間にセンセーショナルを呼び、続く「時と川の」で紛れもない名声をものにする。やがて、世界を手に入れたような傲慢な振る舞いに歯止めが効かなくなるトマスは、パーキンズと訣別。アリーンにさえ見放されてしまう。


bestsellar-500-2.jpg作家の手書き原稿に、編集者がペンを入れる。それをタイピストたちがタイプライターに打ち込んでいく。いまこの時代からすれば、気の遠くなるような“人力”作業を経て書物が出版される過程、ヘミングウェイがかつての盟友フィッツジェラルドやトマスをこきおろす逸話も紹介される。なかでもフィッツジェラルドが精神的に不安定な妻ゼルダと久しぶりにパーキンズ夫妻を訪れたシーンで、泥酔したトマスが乱入してくるくだりが興味深い。


派手な生活におぼれ妻を死なせた男が、愛娘の養育権を取り戻すために生き方を改めるが、泥酔した悪友との再会によって、その願いは水泡に帰す。フィッツジェラルドの名短編で知られる「バビロンに帰る」のモチーフにも思えたのはうがった見方だろうか。


(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ http://best-seller.jp/©GeniusFilmProductionsLimited2015

(C)Genius Film Productions Limited 2015

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