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『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』

 
       

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作品データ
原題 Little Boy 
制作年・国 2014年 アメリカ 
上映時間 1時間46分
監督 監督・脚本:アレハンドロ・モンテベルデ
出演 ジェイコブ・サルバーティ、エミリー・ワトソン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、マイケル・ラパポート、デビッド・ヘンリー、トム・ウィルキンソン
公開日、上映劇場 2016年8月27日(土)~ヒューマントラストシネマ有楽町、9月3日(土)~テアトル梅田、9月10日(土)~シネ・リーブル神戸、9月24日(土)~京都シネマ ほか全国順次公開

 

~移民から見た第二次世界大戦下のドラマ~

 

いつの時代も、子どもにとって父親はヒーローだ。小さく生まれたペッパー(ジェイコブ・サルヴァーティ)は”リトル・ボーイ”と呼ばれ、近所ではからかいの的だった。そんな彼を大きな愛情で包み込んだのが、父親のジェイムズ(マイケル・ラパポート)だった。冒険ごっこに自転車の練習、映画館、二人はいつも一緒だった。とりわけ、ジェイムズがペッパーのことを「相棒」と呼ぶのが印象的だ。そんな父親が徴兵されてしまう……。敵国日本を憎み、日系人のハシモト(ケイリー=ヒロユキ・タガワ)に反抗するペッパーにオリバー司祭(トム・ウィルキンソン)は戦地から父親を呼び戻す秘策を授ける。それは聖書に記された6つの項目と「ハシモトに親切にする」というものだった。


LittleBoy-500-1.jpg監督はアレハンドロ・モンテヴェルデ。本作でメキシコの映画賞の三冠に輝いた。原子爆弾に付けられた”リトル・ボーイ”という呼称を知り脚本を思いついたというが、正直、愛くるしい少年と原子爆弾を重ね合わせる発想は日本人には受け入れ難い。そんななか、人間的な魅力をいかんなく発揮しているのが、タガワ・ヒロユキと母親役のエミリー・ワトソンだ。エミリーは少年をとりまく寓話的な世界観と現実世界とをつなぐ存在として重要な役割を果たし、タガワは文字通り、映画を支える立役者となった。


LittleBoy-500-3.jpg監督も脚本家も共にメキシコ人でまだ年若く、移民だった彼らのリアリティは戦後の風俗にはよく表れているものの、大戦当時、とくに日本人(日系人)をとりまく環境については全く知識がなかったという。そこに血肉を付けたのがタガワだった。国家、政治、思想、どれもひとつの塊になったとき、制御不能の脅威と化す。しかし、その塊をくずしてみれば、ひとり一人の人間なのだということを小さな少年の澄んだ瞳が教えてくれる。ハシモトとのふれあいを通して、少年の小さな世界は広がりを見せる。


LittleBoy-500-2.jpg本作が制作されたのは2014年。メキシコではNO.1の興行成績を誇るが、アメリカでは宗教映画として公開されたため、観る人の幅を狭めてしまったようだ。今年、オバマ大統領の広島訪問が実現し、日本では大きく報道されたが、アメリカでの認知度はそれ程でもないと聞く。時に神を、時に仏を崇め、世界でも珍しい信仰のない国だと言われる日本だが、武士道精神で知られる通り、こと人としての誇り、尊厳というものには篤い国民性だ。訪問を歓迎した広島の人たち、それも80歳以上の人たちの表情を見たとき、胸が衝かれる思いがした。それが、とても穏やかな表情だったからだ。


LittleBoy-500-4.jpg自身も幼少期からアメリカで生活してきたタガワ氏は、インタビューで、今回の役を通して、日本人の魂や強さを演じることができて誇りに思う、と語っている。日本人としては複雑な表現もある本作だが、「ラスト・エンペラー」以降、こつこつとキャリアを重ね、ステレオタイプの判で押したような日本人役から今回のような深みのある役どころまでステップアップを果たしたタガワ氏の思いを知り、胸が熱くなった。                  

 (山口 順子)

公式サイト⇒ http://littleboy-movie.jp/

(C)2014 Little Boy Production, LLC.All Rights Reserved.

★舞台挨拶のお知らせ
・場所:テアトル梅田
・日時:9月3日(土)初回(11:50~の終映後に)
・ゲスト:マサオ・クメ役の尾崎英二郎さん

 

 

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