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『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』

 
       

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作品データ
原題 SONG OF THE SEA
制作年・国 2014年 アイルランド・ルクセンブルク・ベルギー・フランス・デンマーク
上映時間 1時間33分
監督 トム・ムーア
出演 (声の出演):デヴィッド・ロウル、ブレンダン・グリーソン、フィヌーラ・フラナガン、リサ・ハニガン、ルーシー・オコンネル、ジョン・ケニー
公開日、上映劇場 2016年8月20日(土)~YEBISU GARDEN CINEMA,8月27日(土)~ シネ・リーブル梅田 近日~ 京都シネマ、元町映画館 ほか全国順次公開

 

~神秘的な妖精の世界を旅する少年の冒険譚~

 

宮崎駿監督の映画に刺激を受けてきたアイルランドの若手監督が、アイルランドの民話を題材に、美しい色彩、躍動感のある動き、ユニークな登場人物と、魅力たっぷりのファンタジックなアニメ映画をつくりあげた。


SOTS-500-2.jpgベンとシアーシャは、人間の父親とセルキーの母親の間に生まれた兄妹。セルキーというのは、海ではアザラシ、陸では人間の女性の姿になる妖精。母はシアーシャを生むと海に姿を消し、兄妹は灯台守の父と3人、海辺でひっそり暮らしていた。6歳の誕生日を迎えた日、シアーシャはフクロウの魔女マカの手下に連れ去られてしまい、ベンは妹を探しに旅に出る…。


SOTS-500-1.jpg洞窟の中や海の底と、ベンが旅するのは、魔法の世界。アイルランドのケルト紋様を思わせる渦巻きや曲線、直線など様々な幾何学模様にあふれ、淡く美しいグラデーションのある神秘的な世界が広がる。暗闇で光がきらめき、観客は、まるで不思議な遊園地の乗り物に乗って、ベンと一緒に旅しているような気分になる。


SOTS-500-3.jpg長い髪の毛の1本1本に物語があるという語り部の精霊シャナキー、大きな目と豪快な体つきで威圧的にみえるが、感情はすべて封印してガラス瓶に詰め込んだという魔女マカと、妖精たちは、皆、個性的でユーモアいっぱい。アザラシたちが、尻尾をはためかせながら、海を元気に泳いでいく姿は楽しく、白いコートを着て、アザラシのように海を泳ぐシアーシャがかわいらしい。


妹のせいで母がいなくなったと思い込み、シアーシャにいじわるばかりしていたベンは、旅を通じて、少しずつ成長していく。妹探しの中で、何度も勇気をふりしぼって、恐怖を乗り越える。飼い犬クーの勇敢さと忠実さがベンの危機を何度も救い、動物も人間のように活躍する。


SOTS-500-4.jpg「この場所から この瞬間にかけて 北から南にかけて 東から西にかけて 時間から空間にかけて 貝殻からは 海のうたが聞こえる 静かでも穏やかでもなく また愛を探し求めている」という主題歌の歌声が、遠くアイルランドの波音を思わせ、優しく息を吹きかけ、そっと癒してくれるようだ。雄大な自然の中で、人が妖精と一緒に暮らす豊かさの余韻が残る。
 

(伊藤 久美子)

 公式サイト⇒ http://songofthesea.jp/

©Cartoon Saloon, Melusine Productions, The Big Farm, Superprod, Nørlum

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