原題 | UN+UNE |
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制作年・国 | 2015年 フランス |
上映時間 | 1時間54分 |
監督 | クロード・ルルーシュ |
出演 | ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポル、ヴェナンチーノ・ヴェナンチーニ、アンマ/マーター・アムリターナンダマイー(特別出演)他 |
公開日、上映劇場 | 2016年9月3日(土)~Bunkamuraル・シネマ、立川シネマシティ、シネ・リーブル梅田、9月10日(土)~シネ・リーブル神戸、10月~京都シネマほか全国順次公開 |
~名匠が抒情たっぷりに描く、禁断のおとなの恋~
パリやニューヨークを恋物語の舞台に選ぶというのはちょっとズルいと思える部分もあるのだが、それはロケーションに頼り切った作り手のこと。本当に力量のある人なら、どんな場所であっても、そこで繰り広げられる恋人たちのお話にみごとな光と影を刻み込むことだろう。だから、あの名作『男と女』の監督クロード・ルルーシュが、恋の舞台というよりは世俗を超越した領域を持っているようなインドという背景を用いて、どんなふうに料理したか、観る前からとても楽しみだった。
映画音楽の作曲家として活躍するアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)は、ポリウッド版『ロミオとジュリエット』の音楽を担当することになり、恋人のアリス(アリス・ポル)を置いて、単身、インドのニューデリーを訪れる。彼を歓迎するため、フランス大使館では晩餐会が開かれ、大使夫人のアンナ(エルザ・ジルベルスタイン)が彼の隣席に座ったのだが、会話は尽きず、二人はすっかり打ち解けてしまう。大使(クリストファー・ランバート)との間に子供ができないことを悩むアンナは、聖者アンマに会いに行くと告げるのだったが…。
出会いのシーンから、きっと二人は恋におちるだろうと想像してしまうのだが、アンナの星が宿っているような瞳ったら、もうどうしようもありませんわ。まっすぐに正面から見つめてくるかと思えば、男の斜め後ろからもその視線は攻めてくる。第三者がそばにいれば、この女性はこの男性に夢中だとすぐに気づくようなメロメロ視線なのだ。演じながらエルザ・ジルベルスタインは本当にジャン・デュジャルダンに恋しちゃったかも…と思わせるほどで、単なる邪推ならば、ジルベルスタインの演技力はタダものではない。
将来も共に歩もうとする人が別にいるのに、気持ちを抑えられない、それどころかだんだんと高まっていく。逃げようとしたはずなのに追いかけてくる。そして、追いかけられたことに実は至福感を覚える。結局、おとなになっても恋の道行きは同じ。でも、ブレーキをかけなければならない状況が増えてきて、自分の想いとモラルの間で悩む、それがガキの恋とおとなの恋の違いだ。
音楽は、これも名匠フランシス・レイ。鮮やかな色彩と強い太陽の光に彩られるインドの風景に寄り添いながら、何ともロマンティックな余韻を残す。大勢の人たちが願いを聞き届けてほしいとやって来る聖者アンマ登場のシーンも印象的!インドにはこのような聖者と呼ばれる人々がいる。すでに世を去ったが、現代インドの巨星といわれ、和尚と名乗ったバグワン・シュリ・ラジニーシの言葉には打たれるものが多かったが、アンマの人々を強く抱き締める姿が印象的だ。民に与えるその力はどれだけのものかと思うのだが、監督はそれも物語の一つの伏線のように使ってしまうのだ。最後の最後、思わぬ再会、現実的にはめったに遭遇しないこういう瞬間を、ドラマ語では“運命”と呼ぶのだろう。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://anna-movie.jp/
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