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『ロング・トレイル!』

 
       

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作品データ
原題 A Walk in the Woods 
制作年・国 2015年 アメリカ 
上映時間 1時間44分
原作 ビル・ブライソン著「A Walk in the Woods」
監督 ケン・クワピス
出演 ロバート・レッドフォード、ニック・ノルティ、エマ・トンプソン、メアリー・スティーンバージェン
公開日、上映劇場 2016年8月13日(土)~シネ・リーブル梅田、9月3日(土)~シネ・リーブル神戸、近日~京都シネマ、ほか全国順次公開

 

~何歳になっても、新しく挑戦することから何かが始まる…!~

 

ビルは人気紀行作家。仕事も成功し、孫もでき、愛する妻とともに大きな家で、申し分のない平穏な毎日を送っていた。知り合いの葬儀に参列しては、老いを感じながらも、まだまだ何かできないかと感じていた矢先、「アパラチアン・トレイル」と書かれた標識が目にとまる。アメリカ大陸東部を南北に貫く全長3,500キロの長距離自然歩道。北海道から九州までの距離を半年かけて歩くイメージ。毎年2千人の参加者のうち、踏破するのは10%以下。


LongTrail-500-1.jpgビルの、年齢をわきまえない無謀な挑戦に、妻は、せめて誰かと一緒にと条件を出す。老境を迎えた知人友人の中に、同行を申し出る者はなく、誘ってもいないのに、人づてに聞いたと、40年前ケンカ別れしたきりで音信不通だった旧友カッツが連絡してくる。ほかに相棒のあてもなく、渋々承知したところ、スタート地点にやってきたカッツは超メタボで膝も痛めており、ビルの不安は増すばかり。とにもかくにも二人の珍道中が始まった…。


LongTrail-500-4.jpgきまじめで几帳面なビルと対照的に、カッツはおおざっぱで楽天的。何かにつけ意見がぶつかる。クマと遭遇したり、足を滑らせて渓流に落ち、ずぶ濡れになったり、長い道中は、失敗の連続。それでもめげない二人の会話はユーモアいっぱい。喜怒哀楽に富んだ二人の表情にひきこまれる。おせっかいな女性ハイカーを遠ざけるのに意気投合することもあれば、女性好きのカッツが巻き起こした、とんだハプニングに大慌てしたり…。雄大な眺めが広がるアパラチアン山脈の奥深い森林の中を一緒に旅しているような気持ちに浸れる。


LongTrail-500-2.jpg実話を基にした紀行本「A Walk in the Woods」の映画化。ビルを演じ、プロデューサーも務めるロバート・レッドフォードは、原作本を読んで、ポール・ニューマンと自分が映画の中で共演しているのを見たいと思ったと語る。今は亡きニューマンに代わって、カッツを演じたのは、個性派俳優ニック・ノルティ。最後までまじめに歩いて踏破しようとするビルに、途中で車に乗っても誰にもばれないからとレンタカーを勧めたり、ちゃらんぽらんな怠け者ぶりも、愛嬌があって憎めない。飲酒運転で事故をしてから、ずっとアルコールを断っていると語る場面では、長い人生で背負っているものの重さを感じさせ、深いまなざしが心に残った。


LongTrail-500-3.jpgゴールまでたどり着き、目標を達成することは大切だけれど、歩いている過程(プロセス)、一日一日を大切にすることこそ、旅の醍醐味だと感じ入る。人生も旅と同じ。今ひとときを大切に、ユーモアを忘れず、少しでも人生を楽しむ心持ちで過ごせたらと、諭された気持ちになる。二人の年齢を足せば150歳は優に超える。そんな名優のかけあいは味わい深く、幾つになっても、人間は感情豊かで、異性への関心も失わず、失敗もするけど冒険心にあふれていていいのだと思えてくる。肩の力が抜け、ほっこり心があたたかくなった。

(伊藤 久美子)

 公式サイト⇒ http://www.long-trail.com/

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