原題 | Ingrid Bergman- In Her Own Words |
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制作年・国 | 2015年 スウェーデン |
上映時間 | 1時間54分 |
監督 | 監督:スティーグ・ビョークマン プロデューサー:スティナ・ガーデル 撮影:マリン・コルケアサーロ ボイスオーバー:アリシア・ヴィキャンデル 音楽:マイケル・ナイマン |
出演 | イザベラ・ロッセリーニ、イングリッド・ロッセリーニ、ロベルト・ロッセリーニ、ピア・リンドストローム、フィオレラ・マリアーニ、リブ・ウルマン、シガニー・ウィーバー、ジャニーン・ベシンガー |
公開日、上映劇場 | 2016年9月17日(土)~ シ ネ・リーブル梅田、10月~ 京都シネマ、シネ・リーブル神戸にてロードショー! |
恐れず立ち向かい、一度きりの人生を生き切った。
「聖女」でも「悪女」でもない、イングリッドの素顔。
映画史に残る名セリフ「君の瞳に乾杯」、テーマ曲「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」(もともとは、ブロードウェイ・ミュージカルの劇中曲)などで知られるラブロマンスの名作「カサブランカ」(1942年)で、ヒロインが流した“真珠の涙”を鮮明に記憶している。文字通り、息を飲む美しさで畏怖の念を起こさせた女優こそイングリッド・バーグマンその人だった。
並外れた美貌と確かな演技力で、アカデミー賞に3度輝き、エミー賞(TVドラマ)、トニー賞(演劇)も受賞している伝説の大女優イングリッドの生誕100年を記念するこのドキュメンタリーは、三女イザベラが適任を選出。イングリッドの遺作となった「秋のソナタ」の監督でもあるスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンのドキュメンタリー作品を手掛けたスティーグ・ビョークマン監督は、心の声を信じて生きたひとりの女性の見事な人生もようを浮かび上がらせる。
3歳で母を亡くしたひとり娘のイングリッドを被写体に、写真店を営む父(13歳で死別)はカメラ越しの愛情を注いだ。このことは、女優の道を目指す遠因ともなったはずだ。
1982年8月29日。67歳の誕生日に、人生の幕を下ろしたイングリッドは、写真やフィルムに加え、10歳の時から書き始めた日記、作文に至るまで言葉の記録も大切な思い出として保管していた。それらの遺品を台本にしたこのドキュメンタリーは、不思議なことにまるで自分がこの大女優の隣人であったかのような錯覚を、観る者に抱かせる。彼女がどんなふうに笑い、愛し、子供たちと過ごしたか。家族ぐるみの付き合いでもなければ知りようのない、私人イングリッドを垣間見る思い。愛すること、演じることに貪欲で後悔のない人生を生きる彼女の覚悟は、大切なものを守ろうと日々格闘する私たちと同じだったと気づく。
故郷スウェーデンに夫と娘を残し、ハリウッドに活躍の場を求めた彼女は、巨匠ヒッチコックの心を釘付けにした。戦場カメラマンのロバート・キャパとのロマンスが、仕事の情熱と互いへの思いに引き裂かれてしまっても、彼に捧げられた愛の言葉は彼女の思い出のなかで生き続ける。その後、出演を熱望したロベルト・ロッセリーニ監督と「ストロンボリ/神の土地」撮影中に恋に落ち、妊娠。いわゆるW不倫で厳しい批判に晒された彼女は、ハリウッドから締め出されるが、決して休業も引退もしなかった。しかも6年後、禁を解かれたハリウッドの復帰作「追想」で、アカミー賞主演女優賞を射止めてみせるのだ。
タイトル・ロールを演じるずっと以前から、ジャンヌ・ダルクに関心を持っていたイングリッドが、自分で選んだ生き方を恋愛、仕事面でも貫いた胆力の持ち主だと知って、親近感が湧く。「私は、もっと望んでいるのではありません。すべてを手に入れたいのです」こんな男前な発言になにかしら奮起させられつつ、とても清々しい気分になれた。
(映画ライター:柳 博子)
公式サイト⇒ http://ingridbergman.jp/
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