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『ロスト・バケーション』

 
       

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作品データ
原題 The Shallows 
制作年・国 2016年 アメリカ 
上映時間 1時間26分
監督 ジャウマ・コレット=セマ(『エスター』『ラン・オールナイト』『フライト・ゲーム』『アンノウン』)
出演 ブレイク・ライブリー(『アデライン、100年目の恋』) 
公開日、上映劇場 2016年7月23日(土)~全国ロードショー

 

この夏一番の恐怖体験!
海の真ん中でたった一人でホオジロザメと闘うビキニ美人
 

今年の夏もSFファンタジーやヒーローアクション系の話題作が目白押しだが、そんな中、ホオジロザメに襲われた女性がたった一人でサメと格闘した映画がこんなにも恐怖と興奮と感動を生むとは意外だった。世界中で大ヒットした名作『ジョーズ』(1975年、スティーブン・スピルバーグ監督)以来、人喰いホオジロザメの映画は数多く作られてきた。だが、人気のない入り江だけで展開されるワンシチュエーションで主な登場人物は一人の若い女性だけという異例の恐怖体験は尋常ではない。スプラッターものや心霊ホラーよりもリアリティがあり、体の芯から冷たくなる。スリルと冒険と涼を求める方には、この夏一番のオススメ映画!


LostVacation-500-1.jpg主人公のナンシーを演じているのはブレイク・ライブリー。『恋するジーンズと16歳の夏』(05)では4人の女子高生の中で最もその美しさが印象に残り、『野蛮なやつら/SAVAGES』(12)では二人のイケメンに愛されるのにふさわしい魅力を発揮、さらに、不老不死の身となり時代を超えて生きることの哀しみを描いた『アデライン、100年目の恋』(15)では、エレガントな大人の美しさが際立った。だが、もう“綺麗なだけの女優”とは言わせない。海の真ん中でたった一人、持てる知識を活かしてホオジロザメと格闘する強靭な闘魂を見せたブレイク・ライブラリーの、進化した美しさを目撃することになる。

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医学生のナンシーは、亡き母が若い頃に訪れ自分を宿したというメキシコにある秘密の入り江にやってくる。友人がドタキャンしたせいで一人でサーフィンを楽しむことになるのだが、夕方になり先客の若い男性二人が浜に上がり帰ろうとした時、波乗りの際中にサメに襲われる。青い高波の中に黒く巨大な影がナンシーに突撃してくる。そのシーンの恐ろしいこと!必死で抵抗して、干潮時にしか現れない小さな岩場によじ登る。大腿部を嚙まれた上に毒のあるサンゴで足を怪我して大量の出血をしている。その血に誘われて執拗にナンシーのいる岩場を回遊するサメ。車で帰ろうとする男性たちを呼び止めようとするが、岸から200mほど離れた海上からは声が届かない。


小さな岩場には、ナンシーと共にサメに襲われ怪我をしたカモメが一匹。持ち物はスウェットスーツの上着とピアスとストップウォッチだけ。医学生のナンシーらしくピアスで大腿部の止血を試みたり、カモメの傷を治したりする。もう見ているこちらが思わず“イタッ!イタッ!”と声をあげたくなるシーンの連続だ。刻々と迫る満潮時間、隙あらば襲撃してくるホオジロザメ。


LostVacation-500-2.jpg浜まで泳げない訳ではないが辿り着くまでにサメに襲われるだろうという岩場の微妙な距離。夜中に浜辺を通りかかった酔っぱらいや前日のサーファーなど、助けを求めるが次々とナンシーの期待を裏切る事態に陥る。こうした期待と絶望が交互に訪れ、いよいよ絶体絶命の状況に追い込まれる。その恐怖といったら半端ではない。だが、この入り江に来た時の、母の病死で無気力になっていたナンシーではない。持てる知識と勇気を振り絞って、あらゆる可能性にチャレンジして、最後まで諦めない。衝撃のラストに誰もが息を飲み、大きなカタルシスを味わうことだろう。


(河田 真喜子)

 公式サイト⇒http://www.lostvacation.jp/splash/

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