原題 | Die Abhandene Welt 英題The Misplaced world |
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制作年・国 | 2015年 ドイツ |
上映時間 | 1時間41分 |
監督 | マルガレーテ・フォン・トロッタ(『ローザ・ルクセンブルク』『ハンナ・アーレント』) |
出演 | カッチャ・リーマン(『バンディッツ』『帰ってきたヒトラー』)、バルバラ・スコヴァ(『ローザ・ルクセンブルク』『ハンナ・アーレント』)、マティアス・ハービッヒ(『ヒトラー~最期の12日間~』『愛を読むひと』)、グンナール・モーラー(『オデッサ・ファイル』)、ロバート・ジーリゲル、カリン・ドール他 |
公開日、上映劇場 | 2016年7月16日(土)~YEBISU GARDEN CINEMA、ユナイテッド・シネマ豊洲、7月23日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、8月27日(土)~シネ・リーブル神戸ほか全国順次公開 |
~母があの世まで持っていった秘密、
それは家族を断ち、そして再び結び合わせる~
自分の知っている人にそっくりな人と出会うというのは、なんだか居心地が悪いものだが、強烈な好奇心を呼び起こすのは当然だ。それも家族と瓜二つとなれば、驚きという範疇を超えてしまう。この映画は、ニュー・ジャーマン・シネマの一角を担い、『ローザ・ルクセンブルク』や『ハンナ・アーレント』など社会性の強い作品を打ち出してきたマルガレーテ・フォン・トロッタ監督自身の実体験をもとに作られたという。ごくわずかな人に起こる数奇なめぐりあわせが、ミステリー感ゆたかなドラマとなって結実した。
ドイツに住むクラブ歌手のゾフィ(カッチャ・リーマン)は、ある日、父親に呼び出され、インターネットで配信されたニュースを見せられる。なんとそこには1年前に亡くなった母親エヴェリンに生きうつしの女性が!その女性とは、メトロポリタン・オペラで活躍するプリマドンナのカタリーナ(バルバラ・スコヴァ※エヴェリンと二役)だった。彼女について知りたいと切望する父は、自分は行けないからと、たまたまクラブをクビになったゾフィをニューヨークに送り込むのだが、それは封印されてきた過去や、愛憎が絡み合う家族の歴史と対峙する序章となるのだった…。
ゾフィは祖国ドイツからアメリカ、イタリア、そしてまたドイツへと、謎を追いかける旅に出る。その過程には幾つものワケのわからない“欠けたピース”が現れる。カタリーナの母親が大切に持っていた古い写真、母エヴェリンのお墓に秘かに供えられる花束…。欠けたピースが適切な位置に置かれて、やがて一つの絵となる時、ヒロインと同様、観る者はある種のカタルシスを味わう。「大変だったけど、隠し通して、よう生きたね」…エヴェリンに対してはそんな感じなのだが、貫き通した秘密の愛と言い換えてもいい。一方で、嫉妬と確執によって暗い影を背負っている男性二人は、ある意味、可哀想なくらいの所有欲で、「こういう人生って救済が大変だろうな」なんて思ってしまい、彼ら二人の取っ組み合いの場面ではつい笑ってしまったのだった。
カッチャ・リーマンとバルバラ・スコヴァの二人は、歌手としても実績のある女優さんなので、歌声を聞かせてくれるシーンもじっくり楽しんでほしい。私的には、ドイツで「そんな辛気臭い歌をやめろ」とクビになったゾフィだが、同じ歌を歌ったニューヨークで拍手喝采を受けるシーンは興味深い。彼女は母親の秘密を解き明かす旅で、なんと新しい恋人までゲットしてしまうとは、少々ズルい(?)のだけど、それは物語の美味しいおまけとしておこう。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://gaga.ne.jp/ikipuri/
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