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『セトウツミ』

 
       

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作品データ
制作年・国 2015年 日本
上映時間 1時間59分
原作 此元和津也『セトウツミ』 秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載
監督 大森立嗣
出演 菅田将暉、池松壮亮、中条あやみ、鈴木卓爾、宇野祥平他
公開日、上映劇場 2016年7月2日(土)~テアトル梅田、なんばパークスシネマ、109シネマズ大阪エキスポシティ、神戸国際松竹、MOVIX京都他全国ロードショー

 

~定位置は川辺の階段。
 大阪発男子高校生の「しゃべくりも青春だ!」~


観終わって、「もう終わっちゃったの?」と淋しい気分になるのは久しぶりだ。クラブを辞め、放課後暇を持て余していた瀬戸(菅田将暉)と、塾までの時間潰しをしていた内海(池松壮亮)。この二人の男子高校生がふとしたことから出会い、なぜか放課後同じ場所でなんとなく集まっては、たわいもない会話をして去っていく。ただそれだけの映画なのに、もっと観ていたいと思うのは、たわいない中に二人の生きている世界や考えていることがぎゅっと詰まっているからだろう。そして、何よりも舞台は大阪、しかもいわゆるコテコテと呼ばれるミナミ地区だ。漫才を観ているような気分になるぐらい完璧なボケ、ツッコミぶり。大阪出身菅田将暉のザ・関西弁は言うまでもないが、池松壮亮のソフト関西弁にもご注目を!


setoutumi-500-1.jpgもう少し詳しく言えば、彼らの定位置は川辺の階段。高校生ながら学校も、自宅もほとんど出てこない。階段にダランと座り、間に一人分の隙間があるのが、瀬戸と内海の距離感だ。でも、考えてみれば、これだけ毎日たわいもない会話を出来る相手なんて、そうそういるものじゃない。インテリ優等生ながら、家族のことは口にしない内海と、真っ直ぐバカだけど愛嬌があり、家族と仲がいい瀬戸の真逆コンビだからこそ、ツッコミたくなったり、面白がったりてきるのだ。おかんから「今日、カレー初日」というLINEが来て、「LINEがおかんばっかり」とぼやく瀬戸。内海がツッコむ一方、私も「何日、カレー食べるねん」と心でツッコんで楽しんだ。もちろん同級生樫村(中条あやみ)と高校生らしい三角関係も展開するが、どちらかといえばおまけの扱い。あくまでも、男二人の無駄話が主役なのがいい。

 
setoutumi-500-2.jpgそんな緩さをタンゴの音楽で味付けしているところに、大森立嗣監督(『まほろ駅前狂想曲』)のセンスを感じる。川辺に集うのは、訳ありげなおっさん(鈴木卓爾)やバルーンアートの練習をしているピエロの男(宇野祥平)、そして猫とそれぞれが物思いにふけり、自分の時間を過ごしている。ミニマムな世界から豊かなものを感じられる作品だ。

(江口 由美)

公式サイト⇒ http://www.setoutsumi.com/

(C) 此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C) 2016映画「セトウツミ」製作委員会

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