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『フラワーショウ!』

 
       

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作品データ
原題 Dare to be wild
制作年・国 2014年 アイルランド
上映時間 1時間40分
監督 監督・脚本:ヴィヴィアン・デ・コルシィ
出演 エマ・グリーンウェル、トム・ヒューズ、クリスティン・マルツァーノ
公開日、上映劇場 2016年7月2日(土)~シネ・リーブル梅田、京都シネマ、7月23日(土)~シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開

 

~自分の力を信じる雑草魂が、今、花開く~

 

毎年5月に、ロンドンのチェルシーで開催されるガーデニング大会「チェルシー・フラワーショー」。エリザベス女王が総裁を務め、100年以上の歴史がある大会に、わずか28歳の若さで初挑戦し、見事金賞を獲得した女性がいる。アイルランドの片田舎で育ち、今はランドスケープ・デザイナーとして活躍中のメアリー・レイノルズの実話を基にした映画。


メアリーの小さな頃からの夢は「世界一美しい庭をつくること」。有名なガーデン・デザイナーのシャーロットにアシスタントとして採用されるが、大切に書きためたデザインノートをシャーロットに盗まれ、解雇されてしまう。仕事もなく、家賃の支払いも滞ったメアリーは、チェルシー・フラワーショーで金メダルを獲ることを思いつく。2000人の応募者のうち、会場に出展できるのはわずか8枠。応募用紙さえなかなか手に入らないところ、メアリーの野草の知恵が、幸運を呼び込み、門戸が開かれる…。

FS-500-1.jpgメアリーにとって自然というのはとても身近な存在。今の庭園は、自然が本来もっている素朴な美しさを見失っていると考えたメアリーは雑草とサンザシ(バラ科)の木だけという型破りなアプローチで、見事、書類審査を通過する。次のハードルは、25万ポンドの資金の用意、80日後の施工開始、3週間で完成、500種類の野草、石職人や輸送費の工面…。コネも資金もないメアリーが果たして、自分の理想とする庭を、無事、会場につくりあげ、保守的で権威主義がはびこるフラワーショーに新風を呼び込めるか…。


何があってもへこたれず、自分を信じて、懸命に、無鉄砲ともいえるぐらい果敢に挑戦を続けるメアリーの姿がキュートで爽快。飾らない性格がいい。ヒューチャー・フォレストという自然保護団体に属するヒッピー風の職人たちとの出会いや、砂漠の緑化プロジェクトに携わっているクリスティというイケメン青年植物学者との出会いを通じて、メアリー自身も、大きく成長していく。自分一人だけではなく、仲間たちと手を携えて、難題を乗りこえ、完成させていくことの大変さとすばらしさを、観客も共有する。


FS-500-2.jpgすばらしい自然が永遠に失われる前に、それぞれのやり方で守っていくべきというメアリーの信念が随所に織り込まれ、力強いメッセージとして届けられる。メアリーがつくりあげた「平凡な日常を忘れ、自然の力を感じられる魔法の地」は、子どもの頃、自然の中で心を解放していた体験を、懐かしくよみがえらせてくれるにちがいない。

(伊藤 久美子)

公式サイト⇒http://kasuya-seikei.com/index.html

(c) 2014 Crow's Nest Productions

 

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