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『後妻業の女』

 
       

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作品データ
制作年・国 2016年 日本 
上映時間 2時間08分 PG12
原作 黒川博行「後妻業」文春文庫刊
監督 監督・脚本: 鶴橋康夫
出演 大竹しのぶ 豊川悦司 尾野真千子 長谷川京子 水川あさみ 風間俊介 余 貴美子 ミムラ 松尾 諭 笑福亭鶴光 樋井明日香 梶原 善 六平直政 森本レオ 伊武雅刀 泉谷しげる 柄本 明 笑福亭鶴瓶 津川雅彦 永瀬正敏
公開日、上映劇場 2016年8月27日(土)~全国東宝系にてロードショー

 

★浅ましいけど面白い、壮絶!人間喜劇

 

『後妻業の女』(東宝)鶴橋康夫監督=8月27日公開    “事実は小説より奇なり”とよく言われるが、小説よりもずっとえげつない事件が世間を驚かせた。現実に起こった生々しい事件をもとに、人間の欲望を赤裸々に暴いて見せた内容には唖然とする。


直木賞作家・黒川博之氏の受賞後第一作『後妻業』をテレビ・ディレクター出身の鶴橋康夫監督が映画化した問題作。小説は、京都で実際に起こった女性による連続殺人事件を「予見した」と騒然たる話題を呼んだ。全編、大阪弁の生々しい会話が登場人物のホンネをあぶり出し、大竹しのぶをはじめ、芸達者な出演者たちが底抜けに痛快な笑いを誘う。ズバリ、そこまでやるか?


gosaigyou-500-5.jpg日本は今、大変な婚活ブーム。結婚相談所は全国に4000社、利用者は60万人に上るという。熟年離婚ばやりだが、男も女もいまだ“枯れないシニア”たちは、新たなパートナーを求めてうごめく。相談所で手ごろな高齢の資産家をみつけ、その資産を根こそぎ頂こうと狙う“後妻業”なる職業が登場するのも世知辛い現代らしいお話。「さびしいシニア、とりわけ男」が多いからに違いない。元凶は、高齢化社会で浮き彫りになった“シニア世代の孤独”だ。   


武内小夜子(大竹)は自称63歳。結婚相談所で「若くして夫を失った熟年女性です」と自己紹介する。ハツラツとした小夜子の魅力に男たちはコロリ。今年80歳の中瀬耕造(津川雅彦)も惹かれて首尾よく結婚に至ってめでたし、のはずだったが…。2年後、耕造は突然、脳梗塞で倒れ、娘・朋美(尾野真千子)と姉の尚子(長谷川京子)は病院へ急ぐ。と、後妻に収まった小夜子から法外な葬式費用を要求される。小夜子は耕造の世話をろくにしてないように見えたから朋美たちは唖然。耕造は快復することなく亡くなってしまう。

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耕造の死後、朋美たちは小夜子から法的効力のある「遺言公正証書」を突き付けられ、小夜子が全財産を相続することを言い渡される。そんなアホな…。憤懣やる方ない朋美は、同級生の弁護士に助けを求め調査すると、小夜子は金持ち老人を色香で虜にし、金品を巻き上げる“後妻業の女”であることが判明する。彼女のバックには、結婚相談所の所長・柏木亨(豊川悦司)がいることも分かる。


相談所ぐるみのしたたかな“後妻業ビジネス”に、被害者が続出するのも当然だった。朋美は意を決して裏社会の探偵・本多(永瀬正敏)に調査を依頼、小夜子の次のターゲットになった不動産王・舟山(笑福亭鶴瓶)の調査に乗り出す…。


gosaigyou-500-1.jpg欲望をむき出しにしたけんかは見苦しいけど面白い。人間はここまで浅ましくなれるのか、と他人事のように傍観出来る一方、もしかしたら「自分もこうなっていたかも」という心理も働く。映画に何度も登場するけんかが生々しい。小夜子は焼肉屋で朋美を相手につかみ合いのけんか。“次の標的”不動産王”舟山が、実際はカラケツと分かった時の怒りも大変…。最も激しいけんかは“出来の悪い息子”博司(風間俊介)との激突。2人の間に愛情のかけらもなく“絶縁”の気が覗く。小夜子もまた、高齢化社会の中で見捨てられる側だったのだ。


gosaigyou-500-4.jpg日本映画は欲望をむき出しにした男も女も描いてきた。巨匠・溝口健二監督の『西鶴一代女』(52年)や山崎豊子原作『女系家族』(63年=三隅研次監督)を思い出す。だが『後妻業の女』ほどしたたかに強く、悪い女はかつて描かれたことがなかった。これも行き着くところまで行った“現代社会が生んだ落とし子”。高度経済社会が促進した「核家族化」。必然的に高齢者の増加は、社会からこぼれていくしかない。


後妻業の女は、格差社会が産み出した“隙間産業”か。彼女の所業は余りにも危ないけれど。その闇はどうしようもなく深い。 


 (安永 五郎)

 公式サイト⇒ http://www.gosaigyo.com/

(C)2016「後妻業の女」製作委員会

 

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