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『ふきげんな過去』

 
       

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作品データ
制作年・国 2016年 日本 
上映時間 2時間00分
監督 監督・脚本:前田司郎
出演 小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、板尾創路、山田望叶、兵藤公美、山田裕貴、大竹まこと、きたろう、斉木しげる、梅沢昌代他
公開日、上映劇場 2016年6月25日(土)~テアトル新宿、イオンシネマ板橋、T・ジョイPRINCE品川、TOHOシネマズ錦糸町、テアトル梅田、なんばパークスシネマ、シネ・リーブル神戸、7月16日(土)~京都シネマほか全国順次公開

 

~せりふの妙味が全開!青天の霹靂が少女の日々の色を変えていく~

 

映画の冒頭、傘をぶつける耳障りな音が続く中、橋の上から運河をにらみつけている少女・果子(二階堂ふみ)が映し出される。その顔は、最大級のふきげんで、18歳の彼女は死ぬほど退屈な毎日に苛立っているのだ。東京・北品川でエジプト風豆料理店を営む祖母や両親と暮らしているのだが、18年前に死んだとされてきた母の姉、つまり伯母の未来子(小泉今日子)が突然現れ、「しばらく匿ってよ」と告げた。驚き慌てふためく家族だったが、前科持ちで戸籍も消滅している未来子を受け入れることになる。自分の部屋で未来子と同居しなければならなくなった果子のふきげんはますますヒートアップしていくのだが…。


fukigen-500-1.jpgとにかく台詞回しのおかしさに、ついついくすりと笑ってしまう。演劇界での輝かしい受賞歴を誇る劇団「五反田団」の主宰・前田司郎によるオリジナル脚本は、普通なら深刻になるお話をドライな感覚とウィットのスパイスでまとめ上げ、最後はしみじみ・ほんわかの境地に着地させたもの。映画監督としては『ジ、エクストリーム、スキヤキ』でデビューし、これが二本目となるのだが、女性たちが集まって会話しながら豆をむく場面など、演劇的な雰囲気も多分に感じられる。


fukigen-500-3.jpg過去と未来をすぐさま連想させるふたりの女性の名前。果子は知らず知らずのうちに過去の影を背負っているからなのか。アブナイ爆弾製造者の未来子は、幽霊のように生きてても彼女なりの未来を夢見ているからなのか、といろいろ考えてしまう。サバサバしているように見える小泉今日子×エキセントリックな二階堂ふみの相乗効果はかなりのテンションを生み出し、距離を置きながら相手の感情を引き出したり、激しい取っ組み合いをしたり、と、見ていて飽きない面白さだ。さらに、果子のいとこ・カナ役で登場するとぼけた味わいの山田望叶が加わっての“一夜の冒険旅行”は、どこかファンタジーのようでもある。


fukigen-500-2.jpg果子の最大級のふきげん顔で始まった映画は、はっとするような果子の笑みで終わる。それは“ワニ”に関係するのだけれど、そのワニは果子の投影であり、果子自身の解放だと見た。古き良き和の趣を感じさせる豆料理店の内装や、生活感ゆたかな北品川商店街の“ええ味”も、注目すべき脇役だと思った。


(宮田 彩未)

公式サイト⇒ http://fukigen.jp/

(C)2016「ふきげんな過去」製作委員会