原題 | IRRATIONAL MAN |
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制作年・国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 1時間35分 |
監督 | ウディ・アレン |
出演 | ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、パーカー・ポージー、ジェイミー・ブラックリー他 |
公開日、上映劇場 | 2016年6月11日(土)~丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル池袋、T・ジョイPRINCE品川、大阪ステーションシティシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸ほか全国公開 |
妄想から発展した行動で人生を変革する哲学教授、
悲哀が張り付いたそのおかしみに(笑)!
80歳を越えても創作意欲満々のウディ・アレン監督だが、ウィットとペーソス、人生を哲学する意味深なせりふなど、彼特有のテイストをふんだんに散りばめた本作も実に面白い。後半から結末に至る「え?!」という展開には笑い転げそうになりながらも、お気の毒な主人公の残像が長く残った。
映画の冒頭、冴えない表情をしたひとりの男が、スキットル(ウィスキーなどを入れる携帯用ボトル)を傾けながら車を走らせている。彼は哲学科教授のエイブ(ホアキン・フェニックス)で、アメリカ東部の大学に新しく赴任してきたのだった。彼はある出来事もあり、人生に全く興味を抱けなくなっていた。執筆仕事ははかどらず、彼に関心を持った同僚の教授と裸のおつきあいになってもコトを為せず、ロシアン・ルーレットまでやらかすなど、ますますドツボにはまっていく。そんなエイブに接近してきたのが、教え子のジル(エマ・ストーン)で、彼女はボーイフレンドがいるのに、エイブと時間を共にすることが多くなる。そしてある日、一緒に聞いた見知らぬ者同士の会話がきっかけで、エイブの日常はとんでもなく加熱していくのだった!
ありえないと思っていたことがごくまれに現実化する、それが人生だ。すべてに投げやりだったエイブに生き甲斐をもたらしたのは、“人助け”だと思い込んだエイブの妄想であり、その妄想はいかにして完全殺人をやってのけるか、に集中していく。このあたりの彼の言動は、もうコミカルを超えている。頭のいいジルがなぜエイブのような男に惹かれるのか。つまり、ほっておけない男なのだ。そして、ダメ男でも、ほっておけないような男はどこかロマンティックな影を引きずっているからだ。
エイブとジルが遊園地でデートをした時、数ある景品の中からジルが小さな懐中電灯を選び、エイブになんでそんな実用的なものを?と笑われるのだが、クライマックスでこれが本当に実用的な小道具となるのだから、ほんと、人生、何が起こるかわからない。アレン監督らしい皮肉たっぷりの結末だ。ジャズ好みの監督、今回は、バックで流れるラムゼイ・ルイス・トリオによる音楽が耳に鮮やかな印象を残してくれた。
(宮田 彩未)
公式サイト⇒ http://kyoju-mousou.com/
Photo by Sabrina Lantos (C)2015 GRAVIER PRODUCTIONS, INC.