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『二ツ星の料理人』

 
       

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作品データ
原題 BURNT 
制作年・国 2015年 アメリカ 
上映時間 1時間41分
監督 監督:ジョン・ウェルズ(『8月の家族たち』『カンパニー・マン』)、脚本:スティーブン・ナイト(『完全なるチェックメイト』『イースタン・プロミス』)
出演 ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、オマール・シー、ダニエル・ブリュール、リッカルド・スカマルチョ、サム・キーリー、マシュー・リス、ユマ・サーマン、エマ・トンプソン他
公開日、上映劇場 2016年6月11日(土)~角川シネマ有楽町、渋谷シネパレス、新宿ピカデリー、ユナイテッド・シネマ豊洲、ユナイテッド・シネマとしまえん、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、神戸国際松竹 ほか全国ロードショー

 

レストランの裏舞台に注目!
問題アリのシェフをめぐるサクセスストーリー

 

普段、レストランなどで外食する時、目の前のお料理の味わいや盛り付け、サーブしてくれるスタッフの気配り加減などについつい目が行ってしまうが、お客の目が届かない厨房はどんな状況になっているのか、なかなかそこまで想像力が働かない。この映画であらためて「おお!」とか「なるほど!」とかいろいろ感嘆し、また、料理人って体育会系(上下関係の厳しさ、長時間労働に耐えられる体力と気力)なんやなあと思ったりしたのだった。


futatuboshino-500-1.jpg主人公のアダム(ブラッドリー・クーパー)は、パリのレストランでミシュラン二ツ星を獲得した敏腕シェフだった。ところが、とんでもない問題を起こして、パリから姿をくらます。3年後に、彼は起死回生のつもりでロンドンに出て来た。かつてのオーナーの息子トニー(ダニエル・ブリュール)が開くレストランに押しかけ、ほとんど無理強いでシェフとして働き始める。昔の料理人仲間や、他店で働いていたシングルマザーの料理人エレーナ(シエナ・ミラー)などをスタッフとして呼び込み、意気揚々と自分の存在感と店の評判を上げようとするのだが…。


futatuboshino-500-2.jpg私がロンドンに行ったのは1990年代の初めで、言っちゃ悪いが、食べるものにあまり期待ができない場所だったと記憶している。観光ガイドブックでおすすめという店を訪ねても感動はなく、ある店でステーキを頼んだら、わらじのような形状の牛肉三枚重ねが出てきて、さすがに辟易した。ところが、今、ロンドンではミシュランを狙うような店が続々と登場しているのだという。


futatuboshino-500-4.jpgそういうグルメ世界地図を背景にこの映画の物語は成り立っているのだが、ミシュランの星になぜシェフたちがそこまでこだわり、ミシュラン調査員がお忍びで来店する際の“クセ”にまで神経過敏になるのかなど、なかなかに興味をそそるのだ。マスコミが取り上げた時には“わ~っ”と押し寄せるが、飽きっぽい日本人が多いわが風土とはちょっとちゃうなあと思ったりしてしまう。


futatuboshino-500-3.jpgミシュランに選ばれた本物のシェフをアドバイザーとして迎え、出てくるお料理の風情や厨房風景のリアルさも見どころ。裏切りと復讐、前を向こうという意志の強さ、そして仕事を通じて育まれていく連帯感や愛情など、さまざまな要素が絡み合って、ちょっと素敵なラストシーンに集約される。「強いから人に頼る」というセリフも意味深いものだった。冒頭に、料理人は体育会系と書いたが、そういう意味ではブラッドリー・クーパーは適材であるし、私の好きな俳優のひとり、ダニエル・ブリュールがなんとクーパーと××してしまうシーンもあったりして、サービス度(?)の高い娯楽作だ。

(宮田 彩未)

公式サイト⇒ http://futatsuboshi-chef.jp/

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