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『すれ違いのダイアリーズ』

 
       

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作品データ
原題 THE TEACHER’S DIARY
制作年・国 2014年 タイ
上映時間 1時間50分
監督 ニティワット・タラトーン
出演 ビー(スクリット・ウィセートケーオ)、ブローイ(チャーマーン・ブンヤサック)、ウィア(スコラワット・カナロット)他
公開日、上映劇場 2016年6月18日(土)~シネマート心斎橋、今夏京都シネマ、神戸アートビレッジセンター他全国順次公開
 

~残された日記の相手に片思い!タイ発究極のすれ違いラブストーリー~

 
タイでヒット作を連発している新興のGTH社(16年1月よりGDH559として再出発)の映画の特徴としてよく「フィール・グッドムービー」という言葉が使われる。あっという間に物語に惹きこまれる脚本の力や主演の魅力、時には笑い、時にはきゅんと切なくなり、観終わってハッピーな気分になれるバランスの良さ。そして現代タイの若者たちの等身大の姿に共感できるところも、大衆に受け入れられるポイントなのだろう。
 
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前置きが長くなったが『すれ違いのダイアリーズ』は、GTH社誕生のきっかけとなったオムニバス映画『フェーンチャン ぼくの恋人』のニティワット・タラトーン監督最新作だ。フィール・グッドムービーの魅力がたっぷり詰まった、温かく、切なく、そして優しい物語の世界へようこそ。
 
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冒頭から二人の男女の先生が、都会の学校から転任を言い渡され、とんでもない田舎に車を走らせたかと思うと、ボートに乗って湖上の掘っ立て小屋に向かう様子がテンポよく描かれる。水上学校に赴任した先生たちのサバイバルラブストーリーかと思いきや、何か様子がおかしい。黒板に書いている日付が1年ずれている。そう、ゾーン(ビー)は1年後赴任した、エーン(ブローイ)の後任教師なのだ。
 
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出会うことのない二人を結ぶのは、古い日記だ。水上ならではのサバイバル生活や、ウィークデーは水上学校で勉強を教えるだけでなく、寝食も共にする生徒たちのこと、一人になったときに感じる孤独など、エーンが日々の思いを綴った日記をゾーンは偶然見つける。失敗ばかりのゾーンが日記を心の支えとし、エーンのことを思い描いて片思いにまで発展していく様子を、タイの大人気俳優、ビーがコミカルに表現している。台風にさらされ、字が滲んだ日記も、上から字をなぞって書き直す。交換日記でもないのに返事を書きこむ。アナログだからこそできる「対話」は、物語の後半大いに効いてくるのだ。
 
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水上学校の子どもたちも、エーンとゾーンを見えない糸で結び付ける。指導がうまく、若くてきれいなエーン先生が大好きだった子どもたちと、頭の良さはイマイチでも体育会系のパワーと持ち前の明るさでがんばる新米先生ゾーンのエピソードの数々は、タイの水上学校事情を垣間見せながら、微笑ましさが滲む。子どもたちの成長ぶりが、ゾーンの片思いを新しい局面に導くのも心憎い演出だ。恋人の尽力により都会の学校に戻ったエーンの今を描きながら、水上学校にいた思い出のシーンとゾーンの今の境遇を重ねることで、それぞれの思いが時を越えてシンクロしていく。二人はいつ出会うのか、すれ違いのまま終わるのか。最後までドキドキ感は持続しっぱなし。単なるフィール・グッドムービーの枠を超え、知らなかったタイの一面にも触れる名作が誕生した。
(江口由美)
 
 
 
 
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