原題 | Money Monster |
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制作年・国 | 2016年 アメリカ |
上映時間 | 1時間35分 |
監督 | 監督:ジョディ―・フォスター 製作:ジョージ・クルーニー |
出演 | ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ジャック・オコンネル |
公開日、上映劇場 | 2016年6月10日(金)~TOHOシネマズ(梅田、なんば、二条、西宮OS) 他全国ロードショー |
生放送中のスタジオで人質事件が発生。生死を懸けた救出劇に、
格差社会のリアルを映した心揺さぶるヒューマン・サスペンス。
情報に踊らされ、取り返しのつかない窮地に追い込まれた人間が、犯罪を犯したとする。“自己責任”だから情状酌量の余地なしと、他人事としては割り切れるだろうか。もし、一攫千金を夢みて全財産を失ったのが、自分だったらどうだろう…。信じるべきは金か人間か。究極の問いを現代人につきつけるスリラーにして、やるせなさが拭えない。
誰もが気軽に楽しめる財テク情報番組「マネーモンスター」は、司会者リー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)の軽妙なトークが人気を呼んで高視聴率を叩きだしているが、プロデューサー兼ディレクターのパティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)にとって、リーは厄介なお荷物に思えなくもない。ただでさえ緊張を強いられる生放送で、台本を無視して“皇帝”のように振る舞う彼をコントロールしなければならないからだ。その日も、いつもと同じ調子でヒップホップをBGMにこれみよがしなダンスでオープニングを飾ったリーは、上場したばかりのアイビス・キャピタル株が急落し、8億ドルを超える損失が生じたトピックを取り上げる。コントロール室のパティがセットの隅に人影を見つけたのはちょうどその時で、リーの仕込みかとうんざりしながらカメラに指示を送った次の瞬間、一発の銃声が…。
“金曜の夜に、パジャマ姿でTVを観て、テイクアウトを食べるなんてぞっとする。ビリヤードのキューで目を刺されたほうがマシだ”などと、仕事漬けのパティを皮肉る高慢なリーは、死の恐怖に怯えるぶざまな醜態を全米に晒すハメに陥った。犯人の青年カイル・バドウェル(ジャック・オコンネル)は、“銀行預金よりも安全だ”と勧めたリーの言葉を信じアイビス株に投資し、全財産6万ドル(約700万円)を失った怒りをぶちまける。爆弾を仕込んだベストを着用させられて助かりたい一心のリーは、損失を補てんしようと請け合うがカイルは、単なる腹いせがしたかったのではなかった。彼は“アルゴリズムにバグが発生したと思われる”とするアイビス側の見解をうのみにして、真相を追求しようともしないマスコミに業を煮やし、自ら暴落した理由を突き止めようと思い立ったのだ。生中継を見守っていた人々に、困惑の色が浮かぶ…。
最悪の生中継を続行する一方、コントロール室から事態の収集を試みるパティが、アイビス社の広報担当と連携し、アルゴリズムの設計者やハッカーから有益な情報をかき集めていくなか、妊娠中の恋人による説得が始まる。ところが彼女は警察の思惑を無視し、あろうことかカイルを罵倒。だれもがもはやこれまでかと思う、そんな張りつめた沈黙を破ったのは、すねにキズのあるバツ3男のリーだった…。アイビス社CEOに体当たり取材を敢行すべくスタジオを飛び出すリーは、いまや運命共同体のカイルを狙撃手から守り抜くことができるのか?そして暴かれたウォール街のからくりとは?
監督はハリウッドの才媛、アカデミー賞女優ジョディ・フォスター。「パニック・ルーム」「フライトプラン」といった密室サスペンスに出演した彼女は、TVスタジオで繰り広げられる緊迫劇を実に巧妙に演出、毒のあるユーモアを一滴したたらせて恐怖感を堪能させる。観客を愉しませるのに労力を惜しまないジョディ監督は、映像のニュアンスにもこだわった。劇中のTV番組の映像はTV放送用のカメラで撮影し、さらに映画用カメラで撮影(2種類のカメラに互換性がないため敬遠されがちな用法)する入念さ。ひねりの効いた先読みのできないストーリーに織り込まれたメッセージが、リアルタイムで進行するこのサスペンス・エンターテイメントの神髄なのだ。
(映画ライター:柳 博子)
公式サイト⇒ http://www.moneymonster.jp/splash/