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『シークレット・アイズ』

 
       

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作品データ
原題 Secret in Their Eyes  
制作年・国 2015年 アメリカ 
上映時間 1時間51分
監督 監督・脚本:ビリー・レイ『キャプテン・フィリップス』(脚本)
出演 キウェテル・イジョフォー(『それでも夜は明ける』『オデッセイ』)、ニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』)、ジュリア・ロバーツ(『エリン・ブロコビッチ』『8月の家族たち』)
公開日、上映劇場 2016年6月10日(金)~TOHOシネマズ シャンテ、大阪ステーションシティシネマ、TOHOシネマズ二条、TOHOシネマズ西宮OS 他全国ロードショー

 

13年前、殺人犯を取り逃した3人の捜査官。
絶望の闇に封じられた真実とは? 衝撃的に心揺さぶる犯罪ドラマ。

 

2015年、ニューヨーク。私立探偵のレイの日課は、全米の受刑者の写真をチェックすることだ。かつて彼は、この国で日々、新たに生みだされる犯罪者を捕まえるべく正義心に燃えたFBI捜査官だった。13年前、限りなくクロに近い重要参考人マージンを検挙できなかった失望感から組織を離脱したが、彼には事件を迷宮入りにできない理由があった。そしてついに、“マージンの瞳”を持つ男、強盗犯ベックウィズを見つけだす…。


アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「瞳の奥の秘密」を、9・11後の対テロに血道を上げるロサンゼルスに舞台を移してリメイク。活躍めざましいキウェテル・イジョフォー(「それでも夜は明ける」「オデッセイ」)と、今作が初競演となる2大オスカー女優ジュリア・ロバーツ、ニコール・キッドマンが、国家権力の不条理に翻弄され運命を狂わせていく人間の哀れを、それぞれの“瞳”に湛える妙演で魅了する。


secret-eyes-500-3.jpg2002年。全米の警察組織が垣根を越えて発足した「テロ対策合同捜査班」が置かれるロサンゼルスの検察局。FBIから選任された叩き上げの捜査官レイ(C・イジョフォー)は、気心の知れた検察局捜査官のジェス(J・ロバーツ)とパートナーを組んで捜査にあたっている。着任したばかりのエリート検事補クレア(N・キッドマン)に、レイが特別な感情を抱いていることに気づくのも、それをからかって許されるのも親友のジェスだけだ。そんなある日、監視対象のモスク近くで殺人事件が発生し、ジェスの最愛の娘キャロリンが無残な姿で発見される…。


secret-eyes-500-1.jpgやり場のない悲しみと怒りで身を震わせながらも、不審な青年マージンを割りだしたレイ。ところが、マージンは合同捜査班の一員が抱き込むテロ情報の提供者だったために、上層部は非情な判断を下す。国家の脅威を未然に防ぐ大義は、ジェスの身に降りかかった痛ましい悲劇よりも重い。班の保護下にあるマージンを追及できず、レイ、ジェス、そしてクレアの正義心もまた、失望に沈んでいった。それから13年後、彼らの前に現れたベックウィズは、果たしてマージンなのか? 時を止めた針が再び動き始めた時、運命は思いもかけない結末を差しだそうとしていた。

 
secret-eyes-500-2.jpg青いビニール手袋をはぎとり、死んだ娘を抱きしめるジェス。温もりが伝われば、娘は息を吹き返すに違いない。そんな母親の心情に迫ったJ・ロバーツは、苦渋の表情に深い喪失感をにじませて13年後を演じている。一方、検事に昇格したクレアは変わらぬ美しさだ。再会したレイは、一瞬にして13年越しの思いを甦らせるのだが、クレアは人も羨む人生の代償を支払っていて、憂いを含んだ美しさはN・キッドマンだからこそ成立する。一見、対照的な女性像…ジェスに対しては、キャロリンの死の自責を、クレアに対しては恋愛感情を秘しているレイには、そう映るということなのだろう。

 
愛と憎しみのはざまで激しく葛藤する3人の、絶望の深さを読み取らせる驚愕の結末に、やるせない余韻が心を去らない。揺らぐアメリカの正義、そして善悪の観念でそれを律する難しさも見せつけられるようだった。

(映画ライター:柳 博子)

公式サイト⇒ www.secret-eyes.jp

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