原題 | DEADPOOL |
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制作年・国 | 2016年 アメリカ |
上映時間 | 1時間48分 |
監督 | ティム・ミラー |
出演 | ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T.J.ミラー、ジーナ・カラーノ |
公開日、上映劇場 | 2016年6月1日(水)~TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー |
撃った弾数よりも無駄に口数の多い毒舌ヒーロー。
世界平和は二の次三の次で、自分の愛と人生のために戦ってます。
マーベル・コミックの異色のヒーロー、デッドプールが「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」でスクリーンデビューを果たした時…。12R戦ったヴォルデモート(ハリー・ポッターの宿敵)顔で、おまけに口を塞がれていたためにデッドプールファンからは相当ひんしゅくを買ってしまった。そもそも、「演じていたのはライアン・レイノルズだったよね?」という会話が成立するのかも疑わしいのだが、そんなアウェー感こそ望むところとばかり、今作スピンオフでのレイノルズは、役柄のみならず私怨を晴らす超ド級の暴れっぷり!ティム・ミラー監督が唯我独尊の映像感覚でみせた思い切りの良さ、あるいはかつてない暴走行為は、誰もが映像クリエイターと化した現代への挑戦状とも受け取れる(多分)。もはや現実の社会生活における息苦しさを一蹴できるのは、まさかの自分至上主義&最優先で挑むヒーローだけなのかもしれないとドハマリして、デッドプールな気分をうっかり日常生活へ持ち込みそうになる。危険だわ。笑。
遠目にはスパイダーマンかと思わせて、それは赤いお手製のコスチュームだけ。うじうじ悩んだりしないがキレやすいうえに、戦闘中でもくだらないギャグを飛ばし周囲をイラつかせる“おしゃべリスト”。“スーパーパワーを持っているが、ヒーローじゃない”というエクスキューズには一理あって、実はデッドプールは特殊部隊の元傭兵ウエイド・ウィルソンなる男(つらい生い立ちのせいか、キャリアのせいでか薄らパーソナリティ障がい?)で、悪いやつらを懲らしめ金を稼ぐアウトローだった。ところが、最愛の女性ヴァネッサとの幸せの絶頂で末期がんを宣告され、宿敵エイジャックスことフランシス(エド・スクライン)の狂気の人体改造計画に巻き込まれてしまう。かくしてフレディばりのホラー顔をマスクで覆った彼は、人類の平和を守るX-MENの誘いをスルー。元のウエイド“イケメン”顔を取り戻し、身も心もとろけさせてくれるセクシーな恋人ヴァネッサのもとに帰るべく、エイジャックスを追い詰めていく。
デッドプールが、エイジャックス軍団めがけて橋からダイブするなり、ド派手な奇襲攻撃を繰り広げる。この冒頭シーンがふるってる。ジュース・ニュートンのヒット曲「夜明けの天使」をフィーチャーし、爽やかな日曜の朝みたいな気分で視界にとらえるのは、過激な血みどろアクション!!なにしろ、鋼鉄男コロッサス(VS ジーナ・カラーノ扮するエンジェル・ダストとのバトルも見もの)や“研修生”ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドとは違って、アメコミのキャラとして映画出演している確信犯だけに、いい意味で面倒くさい(笑)。“第四の壁”(演劇用語)を気まぐれに出入りしては観客に話しかけたり、カメラアングルをいじったりの傍若無人さだし、自虐ネタも含めた有り余るほどの映画へのオマージュとハローキティから隠れミッキーまで仕込む念の入れようなのだ。「人生は災難の連続。幸せなんて、たまに入るCMのようなもの」と、マスクに隠した本音はシニカルな人生訓だった…ちょっと切なげに響いたのは気のせいか?それともよっぽど弱っているのか、わたし。
(映画ライター:柳 博子)
公式サイト⇒ http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/
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