原題 | MAGICAL GIRL |
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制作年・国 | 2014年 スペイン |
上映時間 | 2時間07分 PG12 |
監督 | 監督・脚本:カルロス・ベルムト |
出演 | ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、イスラエル・エレハルデ、ルシア・ポジャン |
公開日、上映劇場 | 2016年3月26日(土)~シネ・リーブル梅田、4月2日(土)~シネマート心斎橋、京都シネマ、シネ・リーブル神戸 ほか全国順次公開 |
~謎めいた登場人物たちが“マジカル・ガール”に引き寄せられる奇怪さ~
これほど日本のポップカルチャーが色濃く盛り込まれた映画も珍しい。年に4か月は日本に住んでいるというスペイン人のカルロス・ベルムト監督は、子供の頃「聖闘士星矢」を見て以来、日本のアニメや文学、映画などに特別な興味を持ち研究してきた。お気に入りは水木しげるや勅使河原宏監督や‘60年代の音楽だそうだ。日本の架空のアニメ『魔法少女ユキコ』に憧れる少女が登場したり、アイドル時代の長山洋子の「春はSA‐RASA-RA」や美輪明宏が作詞作曲した「黒蜥蜴の唄」のアレンジ曲を使用したり、作品全体が、これまた監督お気に入りの江戸川乱歩や阿部公房の小説のような奇妙で謎めいた雰囲気を漂わせている。〈プロローグ〉〈世界〉〈悪魔〉〈肉欲〉からなる簡潔な構成に加え、情感を排除したクールな映像がまた独特な世界観を創り出している。
【STORY】
〈プロローグ〉 小学校の数学の授業。「完全な真実というのは常に答えが同じであり、つまり2+2は4なのだ」と説く教師。そんな固い信念の教師をからかったメモを手に隠し持った少女の掌のマジックから始まる。
〈世界〉 場面は現代に切り替わり、日本のアニメ主題歌「春はSA‐RASA-RA」の曲に合わせて鏡の前で踊る少女アリシア(ルシア・ポジャン)。痩せ細った体に青白い顔のアリシアは、曲の途中で倒れ、父親のルイス(ルイス・ベルメホ)が心配そうに見守る病院のベッドで目を覚ます。アリシアは白血病を患い、失業中のルイスはその治療費の金策に苦労していた。ルイスは、アリシアが密かに綴ったノートを発見し、「13歳まで生きること」と「『魔法少女ユキコ』のコスチュームを着て踊ること」が願い事だと知る。何とか娘の最後の願いを叶えてあげたいと、あろうことか宝石店へ強盗に入ろうとする。
〈悪魔〉 精神科医の夫と暮らすバルバラ(バルバラ・レニー)は、夫に従順な美しい妻。だが、どこか不安気で狂気じみた言動を見せることがあり、精神安定剤が欠かせない。夫に頼りっきりのバルバラは、ある夜、夫に捨てられたという絶望感から睡眠薬を飲み過ぎて窓の外に嘔吐してしまう。その吐しゃ物が路上にいたルイスの肩にかかり、ルイスを家に招き入れる。そして、バルバラは寂しさのあまりルイスに体を委ねてしまい、その一夜の関係をネタにお金の欲しいルイスはバルバラに7,000ユーロを要求。夫にルイスとの関係を知られたくないバルバラは、昔の知り合いのアダに仕事の紹介を依頼する。何やら怪しげな仕事のようだが、セックスは伴わないという。紹介された屋敷へ赴くと半身不随の男が現れ、「黒蜥蜴の間」へ入るよう命令される。一体その部屋で何が行われていたのか?
〈肉欲〉 刑務所内でも人望のある穏やかな老人ダミアン(ホセ・サクリスタン)は10年に及ぶ刑期終了を目前にして、「バルバラと再会するのが怖くて出所したくない」とカウンセラーにもらしていた。出所後、バルバラからの電話を1度受けるがすぐに切る。しばらく経って、家の前に重傷を負った女性が倒れこんでいるのを助けたダミアンは、それがバルバラだと知ると急に無関係を装う。だが、バルバラの夫から「お礼を言いたい」と電話で呼び出され、再びバルバラに関わることになる。そう、掌のマジックを見せたあの12歳のバルバラに関わったばかりに刑務所に入る羽目になったのだ。一体二人の間に何があったのか?今再び何者かに傷だらけにされてしまったバルバラは、「あなたは今でも私の守護天よ」とダミアンにささやいて、ある男に復讐してほしいと依頼する。
掌のマジックを見せたバルバラと元教師のダミアン、『魔法少女ユキコ』に憧れるアリシアと元教師の父親ルイス。この4人の関係性を軸に、バルバラの夫や昔の仕事仲間のアダに半身不随の金持ちの男と、謎めいた登場人物たちが織りなす負の連鎖がマジックのように異空間を見せてくれる。“マジカル・ガール”が意味するものとは? その危険をはらんだ独特な世界観を覗き見するような奇怪さと快感がそこにはある。
(河田 真喜子)
公式サイト⇒ http://bitters.co.jp/magicalgirl/
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